不遇な財閥御曹司は、政略妻に一途な愛を捧げたい。



  ***


 そうして、十八時半ごろ。
 いつもとは三十分早く、永眞さんが帰ってきた。


「ただいま、藍南ちゃん。大丈夫?」

「ん……なんとか、少し寝たら少しだけ楽になったかも」


 横にしていた体を起こすと、永眞さんが買ってきたものを冷蔵庫に入れていた。


「藍南ちゃん、レモン買ってきたから嗅いでみたらどう? 落ち着くよ、きっと」

「ありがとう……」


 レモンを受け取って鼻を近づけるといい香りがして、気分もスッキリして落ち着く。


「そうだ、これお守りもらってきた」

「お守り?」

「安産の、お守り」


 有名な神社の小さな紙袋を渡されて中身を見ると御守りが入っていて手に乗せた……けど。


「永眞さん、……これ安産じゃなくて交通安全のお守りだよ」


 藤色のお守りには【交通安全守】と刺繍がされていた。まぁ、確かに“安”は一緒だけど……


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