不遇な財閥御曹司は、政略妻に一途な愛を捧げたい。
***
「……お帰りなさい、永眞さん」
「ただいま、藍南ちゃん」
玄関からリビングに入ると、とってもいい香りがふわっとした。
「藍南ちゃん、これは……?」
「私が作ったの。私ね、内緒で料理教室に行ってて本当は一ヶ月記念日で作りたかったんだけどつわり酷くてできなかったから」
テーブルには、たくさんの料理が並べられていてきっと一日かかったんじゃないかと想像できる。
「永眞さんが好きなメニュー分からなかったから、料理教室で習ったもの作ったんだ……気に入ってもらえたらいいんだけど……永眞さん?」
感動していて黙ってしまっていて、不安にさせてしまったみたいだ。
「あの、迷惑でしたか?」
「そんなわけがないだろう? とても嬉しいよ。美味しそう」
「よかった。永眞さんのように上手くはないかもしれないですけど」
「藍南ちゃんが作ったんだから美味しいに決まってる」
そう言えば、藍南ちゃんはさっきまでの不安そうな表情から笑顔になる。そんな彼女も愛らしい。
それから着替えて一緒にご飯を食べる。どれも美味しくて、そういえばこんなふうに人の手料理食べるのは久しぶりだ……美味しかった。