不遇な財閥御曹司は、政略妻に一途な愛を捧げたい。



「あなたは、お父さんにその気持ちを伝えたの?」

「伝えたところで、あの人は俺を見てはくれない。それに、援助をしなかったのは、あいつの母親が断ったと聞いてる! 愛人の分際で!」


 狂ったように叫び、笑う。
 その姿が恐ろしく感じる。


「あんな奴が幸せになる!? 俺には許せない。散々、俺を、馬鹿にするように父さんの気を引いてっ」

「……っ……」


 彼は、「ハハハハ……っ」とまた狂ったように笑い私に近づく。
 再び顎をグイッと持ち上げると「あんたもかわいそう。あいつと結婚したことを恨むんだな」と吐き捨てた。

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