camelに溺れる
「手慣れてんね。ああいうの、嫌ならそう言わないと本気にされるよ」
「手慣れてる…あぁ、あれは売り上げアップの戦略です。それに、酔いが覚めたら忘れます。そういう人たちしか来ないので」
「じゃあ俺もそういう類の人間になるのかな」
琉と名乗った男の人は、私の返しに半笑いで酔っ払いと認識されるのを嫌がった。
「あの、気になっていたんですけど。琉さんが吸われてるタバコって、珍しい銘柄ですよね?」
「よく気づいたね。キャメルボックスってやつ」
「初めて聞きました。すごく甘い匂い」
このお店は、タバコを吸う人ばかりだけど、キャメルボックスという銘柄は初耳だった。