最強騎士様は素直じゃないけど、どうやら私は溺愛されているようです
10.仕方のないこと
「本当に申し訳ない」
リアムは本当に申し訳なさそうに何回も頭を下げている。
どうやら急に大切な仕事が入ってしまったらしい。代わりのきかない仕事だ、こういうこともあるだろう。
「仕事なら仕方ないわ。気にしないで」
コレットも本当は残念で堪らなかったが、本当に仕方ないことだと思っている。
「お仕事頑張ってきてね、どうか無茶をしないで」
彼の仕事は危険が多い。ひと昔前と比べたら平和だと彼は笑うが、今だって護衛だったり遠くの戦場へ赴くこともあり、命懸けであることに変わりはない。
「大丈夫だよ。この埋め合わせは必ずする。許してくれ」
「ええ、約束よ」
心配させまいと、コレットはにっこりと笑った。
それじゃあ、とリアムはその足で仕事に向かうらしい。
「……気をつけてね」
「ありがとう」
リアムは穏やかに微笑むと、颯爽と店を出て行ってしまった。そんな彼の背中は頼もしくて、やっぱり素敵だと改めて感じる。それと、同時にやっぱり寂しいという気持ちが押し寄せてくる。
彼が無事に帰ってきてくれたらそれでいいわ。
コレットはそう自分に言い聞かせた。
「……残念だったわね」
アベラが心配そうにコレットの顔を覗き込む。
「いいのよ、仕方ないわ。ドレスに着替えてしまう前で良かった……私もお店にでるわね」
その方が気が紛れる。そう思ったコレットだったが、こんな日に限ってそれほど店も忙しくない。
「……なんだか、今日はお客さんが少ないのね」
「ああ、第二土曜日は比較的お客さんが少ないのよ。私もそこまで意識してなかったけど、この前リアムに聞かれたの。コレットをデートに誘いたいんだけど、いつなら連れ出していいかなって」
アベラが帳簿などと照らし合わせた結果、僅かに第二土曜日は客足が少ないらしい。
「いつでもいいって言ったんだけど、"義姉さんに負担を掛けるのはコレットが気にすると思う"って。いい男ね」
アベラが義姉さんと呼んでもいいとリアムに言ってから、彼は律儀にそう呼んでいる。アベラはそれも嬉しいらしい。
「そうだったの……」
リアムがそこまで気を回してくれていたことに気付かなかった。自分の不甲斐なさに、コレットは少し恥ずかしくなった。
来客を告げるベルが鳴り、レミがにこやかに店に入って来た。
「やあ、この前は本当にありがとう」
レミはバスケットと、お礼に、と茶葉を数種類持ってやって来た。隣国で人気のある紅茶らしい。とてもいい香りがする。
「あのパンとても美味しかったよ。父と母も喜んでいた」
「良かったわ。お母様の体調はどうかしら?」
「もうすっかり元気だよ」
レミはきょろきょろと視線を彷徨わせて、意を決したようにコレットに訊ねた。
「……ところでコレット、今日はデートじゃないのか?」
「彼に急な仕事が入ってしまったのよ」
「ひどいなあ。それで元気がないのか?」
そんなに表情に出ていたかと、コレットは苦笑した。
「大丈夫よ。仕方ないことだと思っているわ」
レミはしばらく考えた後、何かを閃いたようにパッと顔を輝かせた。
「休憩は何時から?」
コレットが答えるより早く、アベラが瞬時に答えた。
「もう取ってもいいわよ。元々お休みのつもりだったし、見ての通りお客さんもいないし」
「じゃあ、コレットを少し連れ出してもいいかな?」
「ええ、でも暗くなる前に返してね」
アベラは念を押すようにレミに詰め寄った。
「アベラ姉さん……いいの?」
おずおずとコレットが訪ねると、アベラは豪快に笑った。
「ええ、思いっきり楽しんできなさい」
リアムは本当に申し訳なさそうに何回も頭を下げている。
どうやら急に大切な仕事が入ってしまったらしい。代わりのきかない仕事だ、こういうこともあるだろう。
「仕事なら仕方ないわ。気にしないで」
コレットも本当は残念で堪らなかったが、本当に仕方ないことだと思っている。
「お仕事頑張ってきてね、どうか無茶をしないで」
彼の仕事は危険が多い。ひと昔前と比べたら平和だと彼は笑うが、今だって護衛だったり遠くの戦場へ赴くこともあり、命懸けであることに変わりはない。
「大丈夫だよ。この埋め合わせは必ずする。許してくれ」
「ええ、約束よ」
心配させまいと、コレットはにっこりと笑った。
それじゃあ、とリアムはその足で仕事に向かうらしい。
「……気をつけてね」
「ありがとう」
リアムは穏やかに微笑むと、颯爽と店を出て行ってしまった。そんな彼の背中は頼もしくて、やっぱり素敵だと改めて感じる。それと、同時にやっぱり寂しいという気持ちが押し寄せてくる。
彼が無事に帰ってきてくれたらそれでいいわ。
コレットはそう自分に言い聞かせた。
「……残念だったわね」
アベラが心配そうにコレットの顔を覗き込む。
「いいのよ、仕方ないわ。ドレスに着替えてしまう前で良かった……私もお店にでるわね」
その方が気が紛れる。そう思ったコレットだったが、こんな日に限ってそれほど店も忙しくない。
「……なんだか、今日はお客さんが少ないのね」
「ああ、第二土曜日は比較的お客さんが少ないのよ。私もそこまで意識してなかったけど、この前リアムに聞かれたの。コレットをデートに誘いたいんだけど、いつなら連れ出していいかなって」
アベラが帳簿などと照らし合わせた結果、僅かに第二土曜日は客足が少ないらしい。
「いつでもいいって言ったんだけど、"義姉さんに負担を掛けるのはコレットが気にすると思う"って。いい男ね」
アベラが義姉さんと呼んでもいいとリアムに言ってから、彼は律儀にそう呼んでいる。アベラはそれも嬉しいらしい。
「そうだったの……」
リアムがそこまで気を回してくれていたことに気付かなかった。自分の不甲斐なさに、コレットは少し恥ずかしくなった。
来客を告げるベルが鳴り、レミがにこやかに店に入って来た。
「やあ、この前は本当にありがとう」
レミはバスケットと、お礼に、と茶葉を数種類持ってやって来た。隣国で人気のある紅茶らしい。とてもいい香りがする。
「あのパンとても美味しかったよ。父と母も喜んでいた」
「良かったわ。お母様の体調はどうかしら?」
「もうすっかり元気だよ」
レミはきょろきょろと視線を彷徨わせて、意を決したようにコレットに訊ねた。
「……ところでコレット、今日はデートじゃないのか?」
「彼に急な仕事が入ってしまったのよ」
「ひどいなあ。それで元気がないのか?」
そんなに表情に出ていたかと、コレットは苦笑した。
「大丈夫よ。仕方ないことだと思っているわ」
レミはしばらく考えた後、何かを閃いたようにパッと顔を輝かせた。
「休憩は何時から?」
コレットが答えるより早く、アベラが瞬時に答えた。
「もう取ってもいいわよ。元々お休みのつもりだったし、見ての通りお客さんもいないし」
「じゃあ、コレットを少し連れ出してもいいかな?」
「ええ、でも暗くなる前に返してね」
アベラは念を押すようにレミに詰め寄った。
「アベラ姉さん……いいの?」
おずおずとコレットが訪ねると、アベラは豪快に笑った。
「ええ、思いっきり楽しんできなさい」