最強騎士様は素直じゃないけど、どうやら私は溺愛されているようです
14.泣かないで
「どうしたの、コレット」
「なんでもないわ」
乱暴に手の平で顔を擦ると、レミは苦笑してハンカチを差し出してくれた。少しくしゃくしゃのハンカチは、温かくて安心する香りがする。
「ありがとう」
「リアムと喧嘩でもしたの?」
レミはコレットに傘を傾けながらゆっくりと隣に腰を下ろした。
「……いいえ、喧嘩になりたくなくて逃げたの。笑っちゃうでしょう」
笑いながらまた涙が溢れて、レミのハンカチでそっと拭った。
「本当の愛なら喧嘩したって壊れない」
「だから怖いのよ」
喧嘩したら、簡単に切れてしまうような関係かもしれない。リアムのことを知るたびに惹かれていったけど、繋ぎ止めていられる自信なんてない。
「大丈夫、だってもう追いかけてきてるし」
レミがほら、と指さす方を見るときょろきょろと視線を彷徨わせているリアムが目に入った。
向こうからこちらはまだ死角になっているはずだ。コレットはさっと影に隠れた。それに気付いたレミは、ふっと優しく笑った。
「大丈夫、喧嘩になんてならないよ。彼は君を愛してる。俺が入る隙もないくらいにね。しっかり話し合って」
すっと、レミが立ち上がったので、コレットも釣られて一緒に立ち上がった。
「コレット!」
リアムに見つかってしまった。
そう思った瞬間、レミがコレットを優しく抱き締めた。リアムが驚いたような表情をしたのが分かる。
「それからもうひとつアドバイス」
レミが耳元で囁いた。
「泣く時はこっそり泣いてもダメだ。目の前で泣いて困らせてやればいい」
さっと体を離して、レミはコレットの肩を励ますようにぽんと叩いた。
「君が一人で泣くことない」
それじゃあ、僕は行くよ。そう言って、レミはひらひらと手を振って去っていった。
すれ違いざまにリアムと冷ややかな視線を送り合っていたのをコレットは見逃さなかった。
「コレット、帰ろう」
リアムが慌てて駆け寄って傘に招き入れてくれた。雨粒が傘を強く叩いている。
「私が悪かった、だから喧嘩しよう」
「ひぇ……怖いこと言うのね」
思わずコレットが身構えると、リアムが困ったように笑った。
「君が言い出したんだろう。何でも話してくれ、君に嫌われたくない。怒ったりもしないから」
喧嘩っていう言い方が悪かったな、とリアムは口元を押さえて上手い言葉を探しているようだ。
まるで幼い子どもに説得するように、リアムは一生懸命だった。
見ると、リアムは傘を差してはいたものの、肩も足元もびしょ濡れだった。
コレットは傘の柄を握るリアムの袖を掴んで言った。
「……良かったら、雨宿りしていって」
「なんでもないわ」
乱暴に手の平で顔を擦ると、レミは苦笑してハンカチを差し出してくれた。少しくしゃくしゃのハンカチは、温かくて安心する香りがする。
「ありがとう」
「リアムと喧嘩でもしたの?」
レミはコレットに傘を傾けながらゆっくりと隣に腰を下ろした。
「……いいえ、喧嘩になりたくなくて逃げたの。笑っちゃうでしょう」
笑いながらまた涙が溢れて、レミのハンカチでそっと拭った。
「本当の愛なら喧嘩したって壊れない」
「だから怖いのよ」
喧嘩したら、簡単に切れてしまうような関係かもしれない。リアムのことを知るたびに惹かれていったけど、繋ぎ止めていられる自信なんてない。
「大丈夫、だってもう追いかけてきてるし」
レミがほら、と指さす方を見るときょろきょろと視線を彷徨わせているリアムが目に入った。
向こうからこちらはまだ死角になっているはずだ。コレットはさっと影に隠れた。それに気付いたレミは、ふっと優しく笑った。
「大丈夫、喧嘩になんてならないよ。彼は君を愛してる。俺が入る隙もないくらいにね。しっかり話し合って」
すっと、レミが立ち上がったので、コレットも釣られて一緒に立ち上がった。
「コレット!」
リアムに見つかってしまった。
そう思った瞬間、レミがコレットを優しく抱き締めた。リアムが驚いたような表情をしたのが分かる。
「それからもうひとつアドバイス」
レミが耳元で囁いた。
「泣く時はこっそり泣いてもダメだ。目の前で泣いて困らせてやればいい」
さっと体を離して、レミはコレットの肩を励ますようにぽんと叩いた。
「君が一人で泣くことない」
それじゃあ、僕は行くよ。そう言って、レミはひらひらと手を振って去っていった。
すれ違いざまにリアムと冷ややかな視線を送り合っていたのをコレットは見逃さなかった。
「コレット、帰ろう」
リアムが慌てて駆け寄って傘に招き入れてくれた。雨粒が傘を強く叩いている。
「私が悪かった、だから喧嘩しよう」
「ひぇ……怖いこと言うのね」
思わずコレットが身構えると、リアムが困ったように笑った。
「君が言い出したんだろう。何でも話してくれ、君に嫌われたくない。怒ったりもしないから」
喧嘩っていう言い方が悪かったな、とリアムは口元を押さえて上手い言葉を探しているようだ。
まるで幼い子どもに説得するように、リアムは一生懸命だった。
見ると、リアムは傘を差してはいたものの、肩も足元もびしょ濡れだった。
コレットは傘の柄を握るリアムの袖を掴んで言った。
「……良かったら、雨宿りしていって」