最強騎士様は素直じゃないけど、どうやら私は溺愛されているようです
7.リアムの憂鬱2
「いらっしゃい、リアム」
ふんわりとした笑顔を向けられると、本当にほっとする。この笑顔に癒されたくて店に通う客がいるのも納得だ。
「コレット、今週の土曜日のこと考えてくれたか?」
「え? 」
コレットはキョトンとした表情を浮かべている。
「ひどいな、忘れたのか?」
「……じゃあ、俺はこれで。コレット、また今度日を改めるよ」
レミはリアムに向かって小さく会釈をすると、足早に店を出て行ってしまった。
「ありがとう。レミ、気を付けてね」
小さくなっていく背中に、コレットがそう声を掛けたのを、リアムは聞き逃さなかった。
「"気を付けて"?」
「ええ、もうすぐ雨が降りそうなのに傘を持って来てないそうなの。私のを貸すって言ったんだけど、走って帰るから大丈夫だって……」
「随分と楽しそうにお話してたんだな」
思わず棘のある言い方をしてしまった。コレットの反応を伺うと、案の定戸惑ったような表情をしている。
こんな表情をさせたい訳ではないのに。
「そうだ、土曜日のことって……」
「ああ、町で映画を見たいと言っていただろう」
「ええ、でもそれって今度の土曜日だったかしら?」
てっきり喜んでくれると思っていたのに、コレットは困惑したような顔をしている。リアムは土曜日は比較的コレットが忙しくないということも事前にし知った上で誘っているつもりだった。プライドの高いリアムは、ついムッとしたような口調になる。
「……不満なのか?」
「そうじゃないけど……」
「あの男と出掛ける方が良かったって言うのか?」
コレットは相変わらず煮え切らない返事ばかりしている。
ああ、また同じことの繰り返しだ。
リアムが怒ったように聞いてしまうから、コレットはまた身構えて言葉を詰まらせてしまう。
コレットの表情が曇ってしまう。
「……それは?」
話題を変えようと、コレットが手に持っていた貝殻に視線を向けた。
「お土産に、って綺麗な貝殻を持ってきてくれたの」
綺麗でしょう、とコレットはパッと顔を輝かせて、リアムに貝殻を差し出した。真っ白なその貝殻はすべすべとした手触りで、波によって形が削られてもいない。完璧な形を保っていた。
なるほど、確かに綺麗だ。
「耳に当てると波の音がするのよ」
言われた通り、貝殻を耳に当てた。微かに潮の香りがする。
「……これは自分の体の中の血が流れる音が響いてるだけだ。波の音でもなんでもない」
「貴方ってそんなにロマンの分からない方だったのね」
コレットは呆れたように溜息を吐いて、貝殻をそっと飾り棚の真ん中に置いた。この飾り棚は彼女とアベラのお気に入りの物ばかりが飾られている。
「あの男は、君に気がある」
「まさか、そんなことないわ」
コレットは冗談だと思っているようだった。大きく首を横に振って、ありえないと否定する。
今度はリアムの方が深い溜息を吐いた。
ふんわりとした笑顔を向けられると、本当にほっとする。この笑顔に癒されたくて店に通う客がいるのも納得だ。
「コレット、今週の土曜日のこと考えてくれたか?」
「え? 」
コレットはキョトンとした表情を浮かべている。
「ひどいな、忘れたのか?」
「……じゃあ、俺はこれで。コレット、また今度日を改めるよ」
レミはリアムに向かって小さく会釈をすると、足早に店を出て行ってしまった。
「ありがとう。レミ、気を付けてね」
小さくなっていく背中に、コレットがそう声を掛けたのを、リアムは聞き逃さなかった。
「"気を付けて"?」
「ええ、もうすぐ雨が降りそうなのに傘を持って来てないそうなの。私のを貸すって言ったんだけど、走って帰るから大丈夫だって……」
「随分と楽しそうにお話してたんだな」
思わず棘のある言い方をしてしまった。コレットの反応を伺うと、案の定戸惑ったような表情をしている。
こんな表情をさせたい訳ではないのに。
「そうだ、土曜日のことって……」
「ああ、町で映画を見たいと言っていただろう」
「ええ、でもそれって今度の土曜日だったかしら?」
てっきり喜んでくれると思っていたのに、コレットは困惑したような顔をしている。リアムは土曜日は比較的コレットが忙しくないということも事前にし知った上で誘っているつもりだった。プライドの高いリアムは、ついムッとしたような口調になる。
「……不満なのか?」
「そうじゃないけど……」
「あの男と出掛ける方が良かったって言うのか?」
コレットは相変わらず煮え切らない返事ばかりしている。
ああ、また同じことの繰り返しだ。
リアムが怒ったように聞いてしまうから、コレットはまた身構えて言葉を詰まらせてしまう。
コレットの表情が曇ってしまう。
「……それは?」
話題を変えようと、コレットが手に持っていた貝殻に視線を向けた。
「お土産に、って綺麗な貝殻を持ってきてくれたの」
綺麗でしょう、とコレットはパッと顔を輝かせて、リアムに貝殻を差し出した。真っ白なその貝殻はすべすべとした手触りで、波によって形が削られてもいない。完璧な形を保っていた。
なるほど、確かに綺麗だ。
「耳に当てると波の音がするのよ」
言われた通り、貝殻を耳に当てた。微かに潮の香りがする。
「……これは自分の体の中の血が流れる音が響いてるだけだ。波の音でもなんでもない」
「貴方ってそんなにロマンの分からない方だったのね」
コレットは呆れたように溜息を吐いて、貝殻をそっと飾り棚の真ん中に置いた。この飾り棚は彼女とアベラのお気に入りの物ばかりが飾られている。
「あの男は、君に気がある」
「まさか、そんなことないわ」
コレットは冗談だと思っているようだった。大きく首を横に振って、ありえないと否定する。
今度はリアムの方が深い溜息を吐いた。