最強騎士様は素直じゃないけど、どうやら私は溺愛されているようです
8.気持ち
「絶対に気がある」
これは誰の目から見ても明らかだろう。それなのにコレットはそんなことはない、ところころと笑っている。
「ないわよ。もしかして妬いてるの?」
「なっ……そんなことはない!」
リアムは頬を真っ赤にして、キッパリと言い切った。
冗談で言ってみただけなのに、そんなはっきりと否定することないじゃない。と、コレットは少し寂しくなった。
「ただ少し……気になるだけだ」
口を尖らせて拗ねたように言う。なかなか引き下がらないリアムに、コレットは少し考えるような素振りをしてから、ゆったりと話し始めた。
「……彼、この町に来たばかりで話し相手が欲しいのよ。田舎町から出てきたから、なんだか寂しいんですって。ここだって十分田舎だけどね」
コレットは穏やかな表情で焼き上がったクッキーを皿に並べている。
「彼の住んでいたところは海はないけど、大きな湖があるそうよ。魚もたくさんいてね、とても綺麗なんですって」
見てみたいわね、とコレットが笑い掛ける。
そんなことまで話していたのか。
「君はどうしてそんなに隙だらけなんだ」
「どうしてそんなに怒ってるのよ」
リアムは明らかに苛立った様子だった。
「怒ってない!」
最強騎士とも呼ばれている男が駄々を捏ねている子どものような言い方をしているのに、思わずコレットは笑ってしまいそうになる。
「……怒ってるわ」
そう言うと、リアムも自覚したのか咳払いをひとつしてすぐにいつもの澄ましたような顔になった。
「……とにかく、今度の土曜日に迎えに行くから。それで良いかな?」
「えっ」
コレットは目を大きくして驚いている。
「なんだ、それも不満なのか」
リアムが今度は困ったような顔で狼狽えている。確かに咄嗟に思い付いたことだったが、
「いいえ、嬉しいのよ。二人で出掛けるのって初めてだなって思って。とても楽しみだわ」
コレットはパッと顔を輝かせた。両手を胸の前で組んでうっとりとしたように笑っている。本当に嬉しそうにしてくれるので、リアムは照れ臭くなってしまった。
「……大袈裟だな」
「楽しみね、リアム。そうだ、良かったらこれ食べてみて。私が作ったのよ」
皿の上に丁寧に並べられたクッキーはまだほかほかと温かい。
さっくりほろほろした食感、口に入れた途端にバターのいい香りがふんわりと広がる。こんなに美味しいのなら、すぐに人気が出るだろう。
「出来立てを食べたのは初めてだ。すごく美味しいよ、これ新しく売るのか?」
「それは売り物じゃないわ。リアムの為に作ったの」
「私に……? 」
リアムはクッキーを二度見して、満面の笑みを浮かべている。
「本当に嬉しいよ。ありがとう、コレット。もしかしてこの形……」
「ハートの形よ、結構綺麗に出来てるでしょう」
「……とても可愛らしいね」
そう言うと、コレットは満足そうに笑った。
「良かったら、それあとで包むわね。全部貴方のだから」
声も上機嫌で、動きも軽やかだった。まるでステップでも踏んでいるようだ。
リアムは自身の心臓ぎゅっとを押さえた。数々の浮名を流した男として、動揺していることを知られたくない。
なんとか冷静ぶっていたが、リアムは激しく感動し、動揺していた。
コレットがこちらを見ていないことを良いことに、ハートの形のクッキーを一枚手に取って、様々な角度から確かめるように眺める。
あのコレットが、私のためにハートの形のクッキーを焼いてくれた!
この事実だけでしばらくの間はどんな困難にも負けないだろう……と、リアムはその幸せをしっかりと噛み締めていた。
これは誰の目から見ても明らかだろう。それなのにコレットはそんなことはない、ところころと笑っている。
「ないわよ。もしかして妬いてるの?」
「なっ……そんなことはない!」
リアムは頬を真っ赤にして、キッパリと言い切った。
冗談で言ってみただけなのに、そんなはっきりと否定することないじゃない。と、コレットは少し寂しくなった。
「ただ少し……気になるだけだ」
口を尖らせて拗ねたように言う。なかなか引き下がらないリアムに、コレットは少し考えるような素振りをしてから、ゆったりと話し始めた。
「……彼、この町に来たばかりで話し相手が欲しいのよ。田舎町から出てきたから、なんだか寂しいんですって。ここだって十分田舎だけどね」
コレットは穏やかな表情で焼き上がったクッキーを皿に並べている。
「彼の住んでいたところは海はないけど、大きな湖があるそうよ。魚もたくさんいてね、とても綺麗なんですって」
見てみたいわね、とコレットが笑い掛ける。
そんなことまで話していたのか。
「君はどうしてそんなに隙だらけなんだ」
「どうしてそんなに怒ってるのよ」
リアムは明らかに苛立った様子だった。
「怒ってない!」
最強騎士とも呼ばれている男が駄々を捏ねている子どものような言い方をしているのに、思わずコレットは笑ってしまいそうになる。
「……怒ってるわ」
そう言うと、リアムも自覚したのか咳払いをひとつしてすぐにいつもの澄ましたような顔になった。
「……とにかく、今度の土曜日に迎えに行くから。それで良いかな?」
「えっ」
コレットは目を大きくして驚いている。
「なんだ、それも不満なのか」
リアムが今度は困ったような顔で狼狽えている。確かに咄嗟に思い付いたことだったが、
「いいえ、嬉しいのよ。二人で出掛けるのって初めてだなって思って。とても楽しみだわ」
コレットはパッと顔を輝かせた。両手を胸の前で組んでうっとりとしたように笑っている。本当に嬉しそうにしてくれるので、リアムは照れ臭くなってしまった。
「……大袈裟だな」
「楽しみね、リアム。そうだ、良かったらこれ食べてみて。私が作ったのよ」
皿の上に丁寧に並べられたクッキーはまだほかほかと温かい。
さっくりほろほろした食感、口に入れた途端にバターのいい香りがふんわりと広がる。こんなに美味しいのなら、すぐに人気が出るだろう。
「出来立てを食べたのは初めてだ。すごく美味しいよ、これ新しく売るのか?」
「それは売り物じゃないわ。リアムの為に作ったの」
「私に……? 」
リアムはクッキーを二度見して、満面の笑みを浮かべている。
「本当に嬉しいよ。ありがとう、コレット。もしかしてこの形……」
「ハートの形よ、結構綺麗に出来てるでしょう」
「……とても可愛らしいね」
そう言うと、コレットは満足そうに笑った。
「良かったら、それあとで包むわね。全部貴方のだから」
声も上機嫌で、動きも軽やかだった。まるでステップでも踏んでいるようだ。
リアムは自身の心臓ぎゅっとを押さえた。数々の浮名を流した男として、動揺していることを知られたくない。
なんとか冷静ぶっていたが、リアムは激しく感動し、動揺していた。
コレットがこちらを見ていないことを良いことに、ハートの形のクッキーを一枚手に取って、様々な角度から確かめるように眺める。
あのコレットが、私のためにハートの形のクッキーを焼いてくれた!
この事実だけでしばらくの間はどんな困難にも負けないだろう……と、リアムはその幸せをしっかりと噛み締めていた。