冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。


「ごめんねっ、紫、葵……っ」


 お母さんがボロボロと泣き出す。


「子どもにこんな負担をかけるなんて、ダメな親で……っ」

「そんなこと言わないで、お母さん」


 私はぎゅっとお母さんの手を握りしめる。


「お母さんがずっと頑張ってきたこと知ってるよ。いっぱい苦労して支えてくれてたこと、ちゃんとわかってるからね」

「うう……っ」

「私はそんなお母さんのこと、ずっと尊敬してたよ」

「紫……っ!」


 お母さんは立ち上がって私を抱きしめ、わあわあ泣きじゃくった。つられて私も涙が溢れた。
 そんな私たちをお兄ちゃんも優しく抱きしめ、真っ赤になった目で私を見つめる。


「紫、約束してくれ。絶対幸せになるんだぞ」

「うん、ちゃんと幸せになる」


 それから三人で抱き合い、涙が枯れるまで泣き続けた。

 すぐに三谷須さんに返事をした。
 大喜びした三谷須さんはすぐにでも籍を入れたいと申し出たけど、流石に私の大学卒業までは待ってもらうことにした。

 これでいい、これで何もかも上手くいくはず。
 不安もあるけど、三谷須さんが私を好きというのは本当のようだし、多分大丈夫。

 結婚までの間に少しずつお互いを知っていけばいいよね――。


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