冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。
明石は昔からの俺の世話係で秘書でもある。最近まで休暇を取っていていなかったが、今日から帰ってくるはず。
「復帰して早々悪ぃんだけど、調べて欲しいことがある」
俺は明石に頼み、「ふじみや」に金を貸したという金融会社とその社長を徹底的に調べさせることにした。
俺がふじみやにずっと出入りしてんのは明石もよく知っているので、特に追求されず二つ返事だった。
にしても葵のやつ、なんで俺に何も言わなかったんだよ。
「……キリさん?」
「あ、起きた?」
ひょこっと顔を覗かせる紫がかわいい。
「おはよ」
「おはようございます」
「もう服着ちゃったの?」
「っ、当たり前じゃないですかっ」
頬を赤く染めてリスみたいにぷくっと頬を膨らませる紫がかわいい。
キスしたい。
「――っ!んっ」
そう思った時にはもうしていた。
もっと頬を赤らめる顔がかわいすぎる。マジでやばいかも。これは想像以上にやばいやつ。
「言っておくけど、これが最後ですからっ」
……ああ、そうだっけ。
俺とはこれが最初で最後なんだっけ。
「その、ありがとうございました。最後に私の我儘聞いてくれて。
お兄ちゃんが心配するので、もう帰りますね」
「――、」