冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。
ぶっちゃけ誰とシても同じだと思ってた。
そもそも誰かのことを本気で求めたことなんてない。女なんて、所詮俺の顔と肩書きにしか興味がないから。
俺もカラダ以上を求めることなんてなかった。
紫は本当に帰ろうとした。
マジでこれで終わり?
本当に俺のことは「思い出」にして、他の男のところへ行こうとすんの?
「…………なよ」
「え?」
「結婚なんてするなよ、紫」
自分でも驚く程の拒否反応を覚えた。
紫が他の男のものになるなんて。
あられもない姿を俺以外の男の前でも曝け出すかもしれないなんて。
考えただけで気が狂いそうになる。
「な、何言ってるんですか」
「本当に好きでもない男と結婚すんの?」
「だって、そうしないと借金が……っ」
「借金さえなければ結婚なんてしなくていいんだろ」
「でも、ふじみやを売らなきゃいけないんですよ!?せっかくお兄ちゃんとお母さんが大事に守ってきたのに!お父さんとの思い出だっていっぱいあるのに!」
親父の借金のせいでこうなってるのに、紫は恨む気持ちなんてこれっぽっちもないんだな。
ただ大切な家族を守りたい、それだけなのか。
そのためなら好きでもない男との結婚を決めてしまえるくらいなのか。