冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。


 子どもだと思っていた紫はとっくに大人だったし、とっくに「女」だった。
 その強さを前にして、狂おしい程に焦がれた。


「行かせたくない」

「何言って……」

「この先紫が他の男のものになるの黙って見てろっていうの?」

「き、キリさん……?」


 無理だ。絶対に耐えられない。
 結婚なんかするな。


「俺がどうにかするよ」


 紫の小さな身体を抱きしめた。俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう程、紫は小さい。

 この小さな身体で懸命に大切なものを守ろうとしている。


「紫が結婚しなくていいように何とかするから」

「何とかって……何か方法があるんですか?」

「大丈夫」


 ちゅっと紫の額にキスを落とす。一晩中一緒にいたというのに、これだけで真っ赤になってしまう初心さがかわいい。

 こんな気持ちは初めてだ。
 今まで誰かに期待したこともなければ、執着したこともない。いつでも簡単に手放せるようにしてきたのに。

 誰かのためにどうにかしたいと思ったのも、誰かのことが欲しいと思ったのも初めてだ。

 我ながらこんな気持ちになるなんて思っていなかったから、どうしていいかわからない。
 だが、とりあえずは借金と紫の結婚を帳消しにすること。

 紫を他の男なんかに取られたくない。


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