冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。
* * *
六条財閥。金融業、不動産、メーカー等の数々の事業を展開するグループのトップ。
かつては内閣総理大臣も輩出したとかで政界にもコネがある、日本有数の財閥だ。
その六条財閥の総裁が俺の父。つまり俺は六条財閥の御曹司、次期総裁ということになる。
一応だけど。
このことは紫は知らない。つーか本名すら教えたことあったか覚えてない。
六条財閥の御曹司なんて、俺にとってはどうでもいい、むしろ足枷でしかなかったし。
「桐光様」
「明石」
メガネをかけた如何にもインテリのこの人物が俺の世話係兼秘書、明石だ。
俺は総裁として後継者になるため、各グループ会社を回って様々なノウハウを学べと言われている。しかも午前中は六条証券、午後は六条電器、夕方からは六条製菓というように一日で異業種を回らされてとにかく頭が疲れる。
だからスケジュール管理やその日の資料を取りまとめてくれる明石の存在は、俺にとってはなくてはならない右腕というわけ。
「長らくのお休みありがとうございました」
「いや、たまにはリフレッシュできた?」
「はい、家族でパリ旅行に行ってきました。こちら、パリで一番のパティシエが作ったというマカロンです」
「へー旨そう」