冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。
一個食べてみたら、その美味しさに驚いた。見た目は普通のマカロンなのに、こうも味が違うのか。
クランベリーのマカロンは程よい柔らかさと、甘酸っぱさが絶妙だ。
「これいいね。手土産に持ってこいだ」
「そう仰るかと思いまして、既に五十箱注文済みです」
「相変わらず仕事が早いな」
「それから、例の金融会社の資料を桐光様のタブレットにお送り致しました」
「流石」
タブレットから届いた資料にザッと目を通す。
スクロールしていくうちに、どんどん表情が歪んでいくのがわかった。
「おい、これって……」
「三谷須金融、所謂闇金ですね」
「おいおい葵の親父さん、なんでこんなところに借りたんだよ」
「社長の三谷須がファイナンシャルプランナーの資格を持っているのは本当のようで、その確かな知識と甘いマスク、穏やかな人物に騙される者が多いようです」
あくまで最初は善人を装って近づき、違法な金利で貸付してるってわけか。タチが悪いな。
「三谷須は若く見えますが今年で三十六歳。過去に結婚していますが、元妻へのDVを理由に離婚しています。最初こそ穏やかで優しい人物ですが、一度キレると手が付けられないそうです」
「とんだクズ野郎だな」
こんなクソみたいな男に紫を奪われてたまるかってんだよ。