冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。
「ふじみやの大将に貸した金も破格の利子を上乗せしてるんじゃないか?」
「ええ、その通りです」
「なんで警察は動かない?」
「三谷須の父親は代議士で、なかなかの権力者のようです。下手な証拠では動けないのでしょう」
「ふーん」
きっと数々の不正を父親に揉み消してもらっていたんだろうな。最悪のクズだ。
だが、六条財閥を敵に回して生きて帰れると思うなよ。
たとえ政治家でそこそこの権力者だろうが、六条財閥を前にしたら消し粒も同然。
「明石、今日の予定は全部キャンセルだ」
「かしこまりました」
「三谷須金融は徹底的に潰す」
そう言って立ち上がると、普段はロボットのように表情を変えない明石が珍しくフッ、と笑みをこぼした。
「公私混同は絶対にせず、時には冷徹とまで囁かれるあなたが、ご友人のためとなると変わるのですね」
「ああ、まあな……」
「それとも他に理由が?」
「別に」
誤魔化しても明石にはどうせバレると思うけど、わざわざ言う必要もないし。
とにかく今は三谷須金融を潰す、それだけだ。
まさか自分が六条財閥の御曹司でよかったと思える日が来るなんて思ってもみなかった。
車での移動中、葵に電話をかける。
「葵か?」
『あ、キリ?ごめん、今ちょっと……』
「三谷須金融なんかに紫を絶対嫁に出すな」
『えっ……、なんでそのこと』