冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。


 更に強くグイッと腕を掴まれて、ゾッと悪寒が走った。鳥肌が立った。

 怖い、気持ち悪い、触られたくない。
 あの時と全然違う。ダメだ、私はもう知ってしまったんだ。

 好きな人と触れ合うよろこびを――。


「ほら!早く来いよ!!」

「やめて……っ!!」


 無理矢理車に乗せられそうになった。
 もうダメかと思った、その時だ。


「その手を離せ」


 私は温かくて優しい腕の中にいた。先程と同じように腕を引っ張られたのに、全然嫌じゃなかった。

 やっぱり、小学生の私は間違ってなかったのかもしれない。初恋の人は、やっぱり王子様だったのかも。


「汚い手で紫に触るな」

「キリさん……っ!!」


 来てくれたことが嬉しくて、更に涙が溢れた。
 思わずキリさんに抱きついた私を優しく抱きしめてくれる。それだけで安心できた。


「もう大丈夫だから」

「はい……っ」


 私の頭を優しくポンポンと撫でた後、キリさんはギロリと三谷須さんを睨みつける。


「紫のこと泣かせやがって」

「お前こそ何者なんだ!?紫さんは僕の婚約者だぞ!!」

「お前みたいなクズが紫の婚約者を名乗るな」


 キリさんの本気で怒っているであろう、ここまで低い声は初めて聞いた。


「お前の悪事は全部わかってる。全部通報してやったから後は警察で吐きな」

「ななな何を言ってるんだ!?」

「お前が一番よくわかってんだろ」


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