冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。
三谷須さんは急に酷く動揺し始めた。
私は何が何だかわからず、ただキリさんに身を委ねて聞いている。
「三谷須霊市さんですね」
すると、数人のスーツ姿の男性が、三谷須さんを取り囲むようにして話しかけてきた。
「警察です。署までご同行願えますか?」
「けっ警察!?何を言ってるんだ!僕の父が誰だと思ってっ」
「お前こそ、六条財閥を敵に回したらどうなるかわかってんだろうな?」
「ろ、六条財閥……?」
私も耳を疑った。警察が現れたことも驚きだけど、今キリさん六条財閥といった?
六条財閥ってあの六条財閥?
「俺の父は六条財閥総裁。一応俺は次期総裁らしいから、お前もお前の親父もいつでも潰せるんだが?
お前の父がどれだけ偉かろうが、六条を敵に回してタダで済むと思うなよ」
「なっ……!?」
「わかったら自分の罪としっかり向き合って来い」
三谷須さんは急に顔面蒼白になり、抜け殻みたいに動かなくなった。そんな三谷須さんを刑事さんたちが連行し、パトカーに乗せる。
短時間で起きたことがあまりにも衝撃的すぎて、いつの間にか涙は引っ込んでしまっていた。
「桐光様」
「明石、ご苦労だったな」
「いえ。お車の準備はできております」
「あ、お前は先に帰ってくれない?紫は俺が車で送るから」
「かしこまりました」
メガネをかけた利発そうな男性はキリさんと私に向かって恭しく一礼し、その場を立ち去った。
もう何が起きているのか全くわからない。