冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。
* * *
「紫〜!!大丈夫か!」
「心配したのよ紫!!」
キリさんに車で送ってもらい、出迎えてくれたお兄ちゃんとお母さんにハグされる。
「キリ、本当にありがとう!!」
「いや。あいつは逮捕されたからもう安心しな」
「本当に助かった……ありがとう」
お兄ちゃんもお母さんも深々とキリさんにお辞儀をし、感謝の意を示していた。
私も車の中で三谷須社長が闇金融の社長だったことを聞いた。更には元妻へのDVが理由で離婚していたことも。
だけど、それ以上に驚いたのはキリさんがあの六条財閥の御曹司だったことだ。
六条財閥といえば私でも知っている、いや知らない方がおかしい。国の中枢を担っていると言っても過言ではない、大財閥なのだから。
「キリさん、私からも改めてありがとうございました。キリさんがいなかったら、今頃……」
「もう無茶なこと考えるなよ」
そう笑ってキリさんは優しく私の頭を撫でた。それだけで心臓が飛び跳ねる。
「ところで葵、葵に頼みがあるんだけど」
「何?俺にできることならなんでもするよ!」
「俺紫と結婚したいんだけど」
…………え?
私もお兄ちゃんも一瞬固まる。
キリさんは至って真顔だった。
「えっ、えっ?」
「紫と、結婚したいんだけど、お兄チャン」
「ちょっ、ちょっと何言ってるの!?」