冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。


 ヒョイっと抱き上げられたかと思うと、ポイポイと靴を脱がされ、そのまま抱っこされて連れて行かれた。

 訪れるのは二度目になる寝室は、この時初めてちゃんと全貌を見たような気がした。
 中央にあるキングサイズのベッドの横にサイドテーブルがあるだけの、広々としてシンプルな寝室。

 ふかふかで反発性が心地良いマットレスの上に、大事そうに寝かされる。かと思ったら、今度は強引に唇を奪われて服はたくし上げられ、大きな手が私の胸を包み込む。


「んっ、まって……!」

「待たない」

「やっ、キリさん……っ」

「キリでいいよ。あの時みたいに」

「っ、」

「呼んで、紫」


 私を見下ろすこの目が好きだ。
 情欲滾らせて私を求めてくれる、獣のような目が。

 たまらなく好きで苦しくなる。


「キリ……すき」


 想いとともに何故か涙も溢れ出た。

 あなたが好き。本当はずっと好きだったの。
 傷つきたくなくて、この初恋と早くお別れしたくて必死だった。

 初めては好きな人に捧げたかった。
 でも、本当はあなたの心も欲しかった。


「好きなの、ずっと……」

「〜っ、あーもう……!」


 キリは何故か苦悶するような表情を浮かべた後、覆い被さるように強く抱きしめた。


「やばい、想像以上の破壊力……」

「え?」

「かわいすぎる」


< 34 / 53 >

この作品をシェア

pagetop