冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。


「はー、この俺が我慢大会を強いられるとはね……」

「何の話?」

「何でもない。つーかこの際聞くけど、何が不満?気をつけるから言ってよ」

「えっ」


 そうやって直球で言われると……。
 どうしようかとモゴモゴしながら、一応答えた。


「ナンパとかされないでください」

「だって俺モテるから」

「自分で言いますか!」

「冗談だよ。さっきは下心ありそうだとは思いつつ、テキトーにやり過ごそうとしちゃってたから、そういうのもやめるわ」


 おお、意外に素直だ。


「他には?」

「えっと、展示会のチケット代なしとかここのドリンクチケットとか、毎回デートでやってるんですか?」

「いや?そもそもデートらしいデートするの、紫が初めてだけど」

「ええっ!?」


 思わずミルクティーを吹き出しそうになる。
 これだけモテてきたキリさんがデートしたことない!?


「嘘でしょ!?」

「本当。真面目に付き合うとかめんどくさいと思ってたから、こういうデートもしたことない」

「そ、そうなんですか……」

「紫が初めてだし、これからも紫としかするつもりないよ」

「っ!」

「紫だけが、トクベツ」


 ……ああ、やっぱりずるい。ずるすぎる。

 そして安易に喜んでしまう私は単純だし、やっぱりまだまだ子どもなのかもしれない。

 まだまだ大人になりきれないけど、少しずつ大人になるから。これからもあなたのトクベツでいさせてください――。


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