冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。


「今日は何をお探しでしょうか?」
「彼女の指輪を」
「ええっ!?」


 わ、私の指輪!?


「もしや婚約指輪でしょうか?」
「そう」
「これはこれは!誠におめでとうございます」


 心底嬉しそうに顔を綻ばせるダンディなスタッフさん。後で聞いたけどこの方がオーナーらしい。

 そんなことより、婚約指輪を買うなんて聞いてない。しかもこんな高級店で。
 だけど、知りません!なんて言える雰囲気はなく、ただ口をぱくぱくさせるしかなかった。


「まず指輪のサイズをお測りしましょう。左手をよろしいでしょうか」
「は、はい」


 当たり前だけど、測ってもらった指は薬指。もうそれだけで心臓がバクバクしてしまう。
 それから様々なデザインの指輪を持ってきてくださった。冷たいお茶も用意してくださって、VIPルームでの接客ってすごいな……。


「こちらですと、石が大きく遠目からでもキラッとして見えて綺麗ですね」
「これいいな。紫はどう思う?」
「き、綺麗だと思いマス」


 もう私は正直何が何だかわからない。すごく綺麗で素敵だけど、一体おいくらするの……??
 きっと私の貯金をすべて引き出しても絶対足りない。


「これにします」
「かしこまりました」


 私のサイズに合わせてくれるとのことで、その日は受け取れないけど支払い諸々はその場でできるらしい。キリさんは当たり前のようにブラックカードを渡していた。


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