フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!
社長室へ入るのが初めてなのに、目の前にいるのが昨晩一緒に飲んだ彼である。
胸が意味の分からないドクドクという早い鼓動を打つ中“社長”と対峙した。
「あ、あの……」
「喜べ。お前は今日から社長秘書だ」
「いや、急に秘書だとか言われても意味が分かりませんし、なりたくもないし――」
「それから、昨日言っていた先輩というのは誰だ? 他社員の士気を下げる者は我が社には不要。即刻解雇処分にする」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「穴埋めの問題か? 他の優秀な者を、他社から引き抜いてくるから心配ない」
「それはそうかもしれませんけど、そういう問題じゃありません!」
思わず大声で言うと、彼の瞳が鋭くなる。
「理由を言え」
これが社長としての彼の姿なのだろうか。
昨夜との差に、怯んでしまう。
けれど――。
「先輩は確かに仕事を押し付けるけれど、いつもじゃありません。それに、彼女は今まで一緒にやってきた仲間です。急にクビだなんて……」
「顧客満足と利益をあげるのに、仲良しごっこはいらない」
「『ごっこ』なんかじゃないです! フラワーデザイン部は、皆で協力して会場を作ることもある。そういう時に、互いの腕を信頼して任せるんです。飾りつけとか、どう頑張っても一人じゃ終わらないから」
言いながら熱くなってしまう。
目頭が熱くなり、涙が零れぬように、頬の奥を噛んで続けた。
「そういう内情を知らないあなたが、まるで使い捨てのように社員を切り捨てるなんてひどいと思います!」
噛みつくように喋ってしまった。
なのに、次に聞こえたその声は、消え入りそうなほど小さかった。
「……なら、俺はどうしたらいい?」
「え?」
顔を上げると、先ほどの威圧感のあるような冷たいまなざしは消え失せて。
代わりに、途方にくれた少年のような瞳でこちらを見つめる社長がいた。
胸が意味の分からないドクドクという早い鼓動を打つ中“社長”と対峙した。
「あ、あの……」
「喜べ。お前は今日から社長秘書だ」
「いや、急に秘書だとか言われても意味が分かりませんし、なりたくもないし――」
「それから、昨日言っていた先輩というのは誰だ? 他社員の士気を下げる者は我が社には不要。即刻解雇処分にする」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「穴埋めの問題か? 他の優秀な者を、他社から引き抜いてくるから心配ない」
「それはそうかもしれませんけど、そういう問題じゃありません!」
思わず大声で言うと、彼の瞳が鋭くなる。
「理由を言え」
これが社長としての彼の姿なのだろうか。
昨夜との差に、怯んでしまう。
けれど――。
「先輩は確かに仕事を押し付けるけれど、いつもじゃありません。それに、彼女は今まで一緒にやってきた仲間です。急にクビだなんて……」
「顧客満足と利益をあげるのに、仲良しごっこはいらない」
「『ごっこ』なんかじゃないです! フラワーデザイン部は、皆で協力して会場を作ることもある。そういう時に、互いの腕を信頼して任せるんです。飾りつけとか、どう頑張っても一人じゃ終わらないから」
言いながら熱くなってしまう。
目頭が熱くなり、涙が零れぬように、頬の奥を噛んで続けた。
「そういう内情を知らないあなたが、まるで使い捨てのように社員を切り捨てるなんてひどいと思います!」
噛みつくように喋ってしまった。
なのに、次に聞こえたその声は、消え入りそうなほど小さかった。
「……なら、俺はどうしたらいい?」
「え?」
顔を上げると、先ほどの威圧感のあるような冷たいまなざしは消え失せて。
代わりに、途方にくれた少年のような瞳でこちらを見つめる社長がいた。