フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!
やがてメインディッシュが終わった頃、社長が口を開いた。
「なぜお前はそんなに花に拘るんだ?」
「え?」
料理から目線を上げ社長の方を見ると、彼は赤ワインの入ったワイングラスを傾けていた。
「フラワーガールをしたんです、小さい頃に」
「フラワーガール?」
オウム返しで返され、ここぞとばかりに力が入る。
「結婚式のときに、新婦さんの前に立ってバージンロードに花びらを巻く役です」
「そんなものがあるのか」
社長はへえ、とワインを口から離し、こちらを見つめた。
「その時が、初めての結婚式への参列だったんです。式場はたくさんのお花が溢れてて、みんな幸せそうに笑ってて、私もとても嬉しくて。そんな風な結婚式に、憧れてたんですけど――」
いつしかそれは、私自身の結婚式じゃなくて、誰かの結婚式になった。
お花の力で、幸せな結婚式をより感動的なものにするお手伝いをしたいと思った。
そう伝えると、社長はふっと笑う。
「美緒は仕事のことになると、やたら饒舌になるんだな」
「な、バカにしてます?」
「いや、全く。逆に、新鮮だ。庶民というのは皆、そんな風に夢を追いかけていたんだなと思った」
「社長はないんですか? 夢とか」
「夢、か……」
社長は顎に手を置きしばらく考え、口を開いた。
「俺は会社を背負い、生きていく。いずれ、御笠グループを背負って生きていかなくてはならない。それが夢と言えば夢なのだろうが、だが遠くない未来にいずれそうなる。しなければならないことをすれば、結果がついてくるのは当然だ」
「すごい自信ですね」
「自信がないやつは、しなければならないこともできないだろう」
さも当然のように言う社長。
やはり生きる世界が違う人なのだと、改めて意識させられる。
「現場を動かすのは従業員は、全然考え方が違うんだな。俺は経営者で、会社を動かすのが仕事だ。利益を最大化し、会社を成長させなければならない。夢というよりも、俺の使命だな。そのために俺は生まれてきた」
やがてドルチェが運ばれてきて、その話は終わってしまう。
冷たいアイスを口に運びながら、気付いた。
私は何か、勘違いをしていたのかもしれない、と。
御曹司である彼は、恵まれていると思っていた。
けれど、グループを背負い、それを使命だと言わざるを得ない。
自身の背負うものを話しながら、寂しそうな顔をした社長。
その目の前で、自身の夢をさも素晴らしいもののように説いた私。
込み上げてきた申し訳無さと恥ずかしさは、ドルチェとともに喉に押し込んだ。
「なぜお前はそんなに花に拘るんだ?」
「え?」
料理から目線を上げ社長の方を見ると、彼は赤ワインの入ったワイングラスを傾けていた。
「フラワーガールをしたんです、小さい頃に」
「フラワーガール?」
オウム返しで返され、ここぞとばかりに力が入る。
「結婚式のときに、新婦さんの前に立ってバージンロードに花びらを巻く役です」
「そんなものがあるのか」
社長はへえ、とワインを口から離し、こちらを見つめた。
「その時が、初めての結婚式への参列だったんです。式場はたくさんのお花が溢れてて、みんな幸せそうに笑ってて、私もとても嬉しくて。そんな風な結婚式に、憧れてたんですけど――」
いつしかそれは、私自身の結婚式じゃなくて、誰かの結婚式になった。
お花の力で、幸せな結婚式をより感動的なものにするお手伝いをしたいと思った。
そう伝えると、社長はふっと笑う。
「美緒は仕事のことになると、やたら饒舌になるんだな」
「な、バカにしてます?」
「いや、全く。逆に、新鮮だ。庶民というのは皆、そんな風に夢を追いかけていたんだなと思った」
「社長はないんですか? 夢とか」
「夢、か……」
社長は顎に手を置きしばらく考え、口を開いた。
「俺は会社を背負い、生きていく。いずれ、御笠グループを背負って生きていかなくてはならない。それが夢と言えば夢なのだろうが、だが遠くない未来にいずれそうなる。しなければならないことをすれば、結果がついてくるのは当然だ」
「すごい自信ですね」
「自信がないやつは、しなければならないこともできないだろう」
さも当然のように言う社長。
やはり生きる世界が違う人なのだと、改めて意識させられる。
「現場を動かすのは従業員は、全然考え方が違うんだな。俺は経営者で、会社を動かすのが仕事だ。利益を最大化し、会社を成長させなければならない。夢というよりも、俺の使命だな。そのために俺は生まれてきた」
やがてドルチェが運ばれてきて、その話は終わってしまう。
冷たいアイスを口に運びながら、気付いた。
私は何か、勘違いをしていたのかもしれない、と。
御曹司である彼は、恵まれていると思っていた。
けれど、グループを背負い、それを使命だと言わざるを得ない。
自身の背負うものを話しながら、寂しそうな顔をした社長。
その目の前で、自身の夢をさも素晴らしいもののように説いた私。
込み上げてきた申し訳無さと恥ずかしさは、ドルチェとともに喉に押し込んだ。