フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!
無事にフラワーガールがその役目を終え、結婚式が始まった頃。
私は小さな立役者にお礼を伝え、控室に戻った。
社長は金井さんと二人で、真剣な顔で花に向かい合っており、丁寧に花びらを離していた。
大柄なのに優しく花を扱う社長の顔に、思わず見惚れてしまう。
「あ、南戸さん、お帰りなさい」
金井さんに言われ、はっとする。
「もうほとんど終わったのですが、このくらいでどうですか?」
籠の中を見せられる。
白を基調とした淡い色の花たち。
フラワーシャワーになったところを想像し、青い空に映えるそれにうん、と頷く。
「ありがとうございます! 完璧です!」
私は社長と金井さんにお礼を言い、籠を二つとも、手に取った。
すると、片方がすっと上に持ちあがる。
社長が持ち上げたのだ。
「俺もやる。一人で配るのは大変だろう」
見上げたそこにある顔は、思いの他近い。
思わずのけぞると、金井さんがこちらに微笑んでいるの見えた。
「南戸さん、社長をお願いできますか? 私は後片付けをしておりますので」
なぜか満面の笑みを浮かべる金井さんの圧に逆らえず、社長と二人で控室を出た。
*
式場の外で式が終わるのを待ち、出てきた参列者にフラワーシャワーを配っていく。
「私は左側の方々に配るので、社長は右側をお願いします」
「分かった」
社長はそう言うと、急に顔色が変わる。
まるでさっきまで笑っていたかのような笑顔になり、参列者に花びらを配りだしたのだ。
「嘘、今の人スタッフ? イケメン♡」
「かっこいい……」
なんて声を背中に聞きながら、笑顔で伸ばされた手のひらに花びらを配っていく。
けれど、なぜか胸の中はモヤモヤしていた。
花びらが舞う中を新郎新婦が歩くのだと想像するととてもロマンチックで、いつもの私ならそれだけで満たされるはずなのに。
やがてチャペルの鐘が鳴り、新郎新婦が出てくる。
それを、フラワーシャワーが彩る。
幸せそうな笑顔の新郎新婦は目を見開き、さらに笑顔を深くした。
私と社長は会場の端のほうで、その様子を眺めていた。
ブーケトスの時間になり、階段の上に花嫁が上がった。
「あのブーケも、お前が作ったのか?」
不意に社長が呟き、「はい」と頷いた。
社長の「そうか」という声が耳元で聞こえ、ピクリと肩が震える。
慌てて見上げれば、社長は口角をあげ、いつもの私みたいな顔をしていた。
すると、私の頬も緩んでしまう。
さっきまでのモヤモヤが、どこかへ行ってしまったかのように。
――あれ、私……。
違う違う、これはきっと社長が『庶民』のことを理解してくれたのが嬉しいから。
私は、庶民の代表なだけ。
そう思って、芽生えかけた気持ちをごまかした。
私は小さな立役者にお礼を伝え、控室に戻った。
社長は金井さんと二人で、真剣な顔で花に向かい合っており、丁寧に花びらを離していた。
大柄なのに優しく花を扱う社長の顔に、思わず見惚れてしまう。
「あ、南戸さん、お帰りなさい」
金井さんに言われ、はっとする。
「もうほとんど終わったのですが、このくらいでどうですか?」
籠の中を見せられる。
白を基調とした淡い色の花たち。
フラワーシャワーになったところを想像し、青い空に映えるそれにうん、と頷く。
「ありがとうございます! 完璧です!」
私は社長と金井さんにお礼を言い、籠を二つとも、手に取った。
すると、片方がすっと上に持ちあがる。
社長が持ち上げたのだ。
「俺もやる。一人で配るのは大変だろう」
見上げたそこにある顔は、思いの他近い。
思わずのけぞると、金井さんがこちらに微笑んでいるの見えた。
「南戸さん、社長をお願いできますか? 私は後片付けをしておりますので」
なぜか満面の笑みを浮かべる金井さんの圧に逆らえず、社長と二人で控室を出た。
*
式場の外で式が終わるのを待ち、出てきた参列者にフラワーシャワーを配っていく。
「私は左側の方々に配るので、社長は右側をお願いします」
「分かった」
社長はそう言うと、急に顔色が変わる。
まるでさっきまで笑っていたかのような笑顔になり、参列者に花びらを配りだしたのだ。
「嘘、今の人スタッフ? イケメン♡」
「かっこいい……」
なんて声を背中に聞きながら、笑顔で伸ばされた手のひらに花びらを配っていく。
けれど、なぜか胸の中はモヤモヤしていた。
花びらが舞う中を新郎新婦が歩くのだと想像するととてもロマンチックで、いつもの私ならそれだけで満たされるはずなのに。
やがてチャペルの鐘が鳴り、新郎新婦が出てくる。
それを、フラワーシャワーが彩る。
幸せそうな笑顔の新郎新婦は目を見開き、さらに笑顔を深くした。
私と社長は会場の端のほうで、その様子を眺めていた。
ブーケトスの時間になり、階段の上に花嫁が上がった。
「あのブーケも、お前が作ったのか?」
不意に社長が呟き、「はい」と頷いた。
社長の「そうか」という声が耳元で聞こえ、ピクリと肩が震える。
慌てて見上げれば、社長は口角をあげ、いつもの私みたいな顔をしていた。
すると、私の頬も緩んでしまう。
さっきまでのモヤモヤが、どこかへ行ってしまったかのように。
――あれ、私……。
違う違う、これはきっと社長が『庶民』のことを理解してくれたのが嬉しいから。
私は、庶民の代表なだけ。
そう思って、芽生えかけた気持ちをごまかした。