フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!
「…………き、です」

 涙でつかえて、うまく話せない。
 それに、この想いを伝えてはいけない気がして、声も小さくなる。

 社長は「もう一度言え」と言うように、頭に手を乗せたまま私の顔を覗く。

「……好き、だから……伝えたくて、来たんです」

「は……?」

 社長ははっと、私の頭から手を離す。
 けれど、伝えてしまったら、もう全部伝えてしまいたくなる。
 だから。

「社長が好きなんです。手の届く範囲の幸せが欲しいって言いましたけど……、今は、その幸せの中に社長が入っているんです。だから、私は――」

 とたんに、ふわりと身体を包み込まれ。

「なんだ、そうだったのか……」

 消え入りそうな声で、社長がそう言って。
 私は社長の腕の中にいるのだと、遅れて気が付いて。

 おかしいくらいに、胸が高鳴っていた。
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