フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!
「な、まだ結婚してないじゃないですかっ!」

「手の届く範囲で幸せになるには、未来永劫美緒に隣にいてもらう必要がある。結婚という未来以外の選択肢がないのだが」

「~~~~~!」

 でも――

「じゃあ、フラワーデザイナーは辞めないといけないですね」

 悔しい。けれど。

「社長の隣にいるほうが幸せですから」

 チクリと胸が痛んで、無理やりに笑顔を作った。
 けれど、社長はそんな私の頭を撫でる。

「辞めなくていい。俺はお前のやりがいを、奪いたくはない。お前の仕事で、幸せが増えていくのは俺も嬉しいからな」

「でも――」

「安心しろ、俺が変える。お前が、フラワーデザイナーとしても、御笠家御曹司の嫁としてもいられる、そんな未来を俺が作る」

 断言するようにそう言われ、胸が熱くなる。

「社長……」

「そして、いつかお前が作った花で飾られた教会で、式を挙げたい。これが、俺の夢だ」

 ――夢。
 それは、社長が持ったことがないと言ったもの。

 そんな社長の覚悟に、胸がどうしようもなくいっぱいになる。

「社長、私……幸せすぎてどうにかなりそうです」

 言いながら、社長に抱き着く。

「お前は、大胆なんだな」

 社長は耳元でそう告げる。

 え? と顔を上げようとして、社長の唇が私の耳たぶをかすめた。

「この部屋に、お前と俺の二人きり。煽られたら、止められない。俺だって、男なんだ」

 そう言って、今度は早急に口づけられて。
 激しいキスに耐えられず、息を漏らすと社長は笑う。

「ところで――美緒は、いつになったら俺の名前を呼んでくれるんだ?」

 ……そう言えば、呼んだことなかったかも。

 だから。

「晴臣さん……」

 愛しい人の名前を呼ぶ。
 すると、また嵐のようなキスが降ってきて。
 それから、私たちは互いを求めあうように、むさぼるようなキスを交わし合う。

 テーブルの上の、二輪の花だけがそれを見ていた。


〈終〉
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