フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!
2 突然の求婚――って、何考えてるの⁉
プシュッとプルタブを引き、そのまま口を付ける。
思いっきり上を向き、ごくごくと泡ごと喉に流し込む。
その光景を、目をまん丸にした彼が、じっと見ていた。
「なんだ、それは」
「缶ビールです。庶民はこうやって、お家でお酒を飲むんです!」
「なるほど……」
彼はテーブルに並んだ缶のひとつを手に取ると、興味深そうに眺める。
「唐揚げはこうやってかじりついた方が、肉汁も味もじわんと溢れて美味しいですし」
言いながら唐揚げにかぶりつけば、彼はまた目を見開いた。
「女のする行動とは思えないな」
「これが“庶民の”女です」
「ふーん……」
鼻で答えるようにそう言った彼は、まだ缶を眺めていた。
「よろしければ、どうぞ? 冷たいうちに」
「じゃ、頂く。ありがとう」
彼は苦戦しながらプルタブを開け、恐る恐る口をつける。
そしてそれを口に含み、彼の喉仏が動いてから数秒。
「悪くない」
と、缶を見つめた。
「でしょ? で、こうやって飲みながら、愚痴るんですよ」
「愚痴?」
「そ。今日の仕事はうまくいかなかったとか、あの人がもっと動いてくれればー、とか。自分じゃどうにもできないような愚痴を、お酒と共に喉の奥に流し込むんです」
「憂さ晴らしというわけか」
「まあ、そんなところですね」
「じゃあ、お前もすればいい」
「え?」
「今、お前の憂さ晴らし、俺が聞いてやる。庶民はどんな風に考え、どんな風に仕事をしているのか――興味がある」
なるほど、と思いつつ、でも憧れの仕事に就いている今そんなに不満もない。
強いて言うならば。
「雑用を押し付けてくる先輩がいるんですよね。私の仕事は、まあ依頼がなければ基本暇なので、そういうのも請け負ってたりするんですけど……でも、自分たちでできるのをしないのは違うんじゃないかなって」
「まあ、そうだな。仕事というのは、適材適所。割り振った方にも、意図があるはずだ。他者に押し付けるのはよくない」
「分かってくれるんですか⁉」
正直、相容れないと思っていた。
こんなにセレブな人だ。
一庶民の愚痴なんて、バカにするのだろうと思っていたから。
嬉しくなって大きな声が出て、急に恥ずかしくなり残りのビールを呷った。
すると目の前の彼も、私の真似をしてビールを呷る。
思いっきり上を向き、ごくごくと泡ごと喉に流し込む。
その光景を、目をまん丸にした彼が、じっと見ていた。
「なんだ、それは」
「缶ビールです。庶民はこうやって、お家でお酒を飲むんです!」
「なるほど……」
彼はテーブルに並んだ缶のひとつを手に取ると、興味深そうに眺める。
「唐揚げはこうやってかじりついた方が、肉汁も味もじわんと溢れて美味しいですし」
言いながら唐揚げにかぶりつけば、彼はまた目を見開いた。
「女のする行動とは思えないな」
「これが“庶民の”女です」
「ふーん……」
鼻で答えるようにそう言った彼は、まだ缶を眺めていた。
「よろしければ、どうぞ? 冷たいうちに」
「じゃ、頂く。ありがとう」
彼は苦戦しながらプルタブを開け、恐る恐る口をつける。
そしてそれを口に含み、彼の喉仏が動いてから数秒。
「悪くない」
と、缶を見つめた。
「でしょ? で、こうやって飲みながら、愚痴るんですよ」
「愚痴?」
「そ。今日の仕事はうまくいかなかったとか、あの人がもっと動いてくれればー、とか。自分じゃどうにもできないような愚痴を、お酒と共に喉の奥に流し込むんです」
「憂さ晴らしというわけか」
「まあ、そんなところですね」
「じゃあ、お前もすればいい」
「え?」
「今、お前の憂さ晴らし、俺が聞いてやる。庶民はどんな風に考え、どんな風に仕事をしているのか――興味がある」
なるほど、と思いつつ、でも憧れの仕事に就いている今そんなに不満もない。
強いて言うならば。
「雑用を押し付けてくる先輩がいるんですよね。私の仕事は、まあ依頼がなければ基本暇なので、そういうのも請け負ってたりするんですけど……でも、自分たちでできるのをしないのは違うんじゃないかなって」
「まあ、そうだな。仕事というのは、適材適所。割り振った方にも、意図があるはずだ。他者に押し付けるのはよくない」
「分かってくれるんですか⁉」
正直、相容れないと思っていた。
こんなにセレブな人だ。
一庶民の愚痴なんて、バカにするのだろうと思っていたから。
嬉しくなって大きな声が出て、急に恥ずかしくなり残りのビールを呷った。
すると目の前の彼も、私の真似をしてビールを呷る。