御曹司の金持くんはマイペースな幼馴染にめっぽう弱い
『どうして?』
『ほら、だってあの金持グループの御曹司が幼馴染なんでしょ? 知らないうちにハードル上がってそう』
『うーん……でも、中学のときはもうあんまり話してなかったし』
『あれ、そうなの? 何で?』
『……その、モテモテだったから、ちょっと近寄りがたくて』
『あー、怖いわな。何言われるか分かんないしね』

 あのときはそう誤魔化したけど、実際は少し違う。
 女の子に囲まれてる金持くんを見て、初めて私なんかが一緒にいて良い人じゃないんだと思い知ったんだ。
 私だけが独り占めして良いような人じゃない。金持くんは大勢の人に囲まれて愛されるべきなんだって──寂しかったけど、そっと距離を置くことにした。
 それでも金持くんは大切な幼馴染だったから、他校に進学して疎遠になった後も、その活躍を応援した。
 高校の陸上競技大会で優勝したときは、テレビ越しに家族ぐるみで「おめでとう」とお祝いしたし、金持くんがメンズモデルとして活動すると知ったときは、そんなに興味もないファッション誌を欠かさず買った。

 だから私は幼馴染を遠くで見守っているつもりだったけど、今思えば……。

< 12 / 26 >

この作品をシェア

pagetop