義弟の恋人
体育祭
我が美しの丘学園は夏休み前に体育祭がある。
私は運動が苦手なので、体育祭前になると憂鬱で仕方がない。
しかもクラス委員として種目別の選手を決めるという面倒な仕事もあり、やっと昨日のホームルームで、リレーの選手やその他の選手を決定した。
けれどどうしても借り物競争の選手が決まらなくて、結局クラス委員である私が仕方なく選手になることとなった。
走るだけでも緊張するのに誰かに何かを借りなければならないなんて、考えただけでも胃が痛くなる。
けれど与えられた仕事はしっかりとこなす、それが私の唯一の取り柄なのだから、頑張らなければ・・・。
借り物競争を引き受け真っ青になった私に、あずみが心配そうな顔を向けた。
「皐月、ごめん。アタシが引き受けてあげたかったんだけど・・・。」
「ううん。気にしないで。大丈夫だから。」
あずみは運動神経が良いから、200M走と障害物競争の選手を掛け持ちしている。
それ以上の負担はかけられない。
放課後になると、リレーの選手がグラウンドで練習を始めていた。
教室の窓からその光景を眺めていると、白いTシャツに学校指定の黒いジャージズボンを履いた廉がウォーミングアップの為のストレッチをしているのが見えた。
相変わらず廉を見学する女子のギャラリーが多い。
やがて選手たちは白い線が引かれたグラウンドのスタート地点に立ち、ホイッスルの音と共に一斉に走り始めた。
走るのが苦手な私から見ると、どの選手も自信満々に見えて別世界の人間に見える。
4番目の列に廉の姿があった。
ホイッスルが鳴り、廉を含んだ選手達が一斉に走り出す。
廉はグングンと2位以下の選手を引き離し、圧倒的な速さでゴールした。
女子達の黄色い歓声が響く。
その颯爽としたしなやかな走りは、見ているすべての人間を魅了した。
もちろん私もその例外ではない。
あんなに恰好いい男子が自分の義弟だなんて、本当なら周りの皆に自慢したい。
けれど廉に学校では話しかけないで、と頼んだのは自分だ。
あれ以来廉は、私の教室へ来ることはおろか、廊下ですれ違っても視線さえ合わせなかった。
それは安堵とともに、淋しさをも運んで来た。
廉がクラスメートの女子と話しているのを見ると、なんだか胸がちくちくする。
廉は私との約束を守ってくれているだけ。
私が淋しいと思うなんて、身勝手すぎる。
そう思いながら窓の外の廉をみつめていると、廉が顔を上げた。
廉の視線が私の方を向いてるような気がして、思わず目を逸らす。
すると廉は一瞬だけ、私だけにわかるように、片手を上げ小さく手を振った。
心臓がどきんと音を立てる。
遠慮がちに私も小さく手を振り返す。
廉は大きく身体をジャンプさせると、再びグラウンドの方へ歩いて行った。
しばらくすると障害物競争の練習がはじまった。
あずみの姿も見える。
あずみが綺麗なフォームでハードルを越えていく姿が格好いい。
心底運動神経の良い人が羨ましかった。
彼等なら大きな障害も困難も軽く飛び越えていきそうだから。
私は運動が苦手なので、体育祭前になると憂鬱で仕方がない。
しかもクラス委員として種目別の選手を決めるという面倒な仕事もあり、やっと昨日のホームルームで、リレーの選手やその他の選手を決定した。
けれどどうしても借り物競争の選手が決まらなくて、結局クラス委員である私が仕方なく選手になることとなった。
走るだけでも緊張するのに誰かに何かを借りなければならないなんて、考えただけでも胃が痛くなる。
けれど与えられた仕事はしっかりとこなす、それが私の唯一の取り柄なのだから、頑張らなければ・・・。
借り物競争を引き受け真っ青になった私に、あずみが心配そうな顔を向けた。
「皐月、ごめん。アタシが引き受けてあげたかったんだけど・・・。」
「ううん。気にしないで。大丈夫だから。」
あずみは運動神経が良いから、200M走と障害物競争の選手を掛け持ちしている。
それ以上の負担はかけられない。
放課後になると、リレーの選手がグラウンドで練習を始めていた。
教室の窓からその光景を眺めていると、白いTシャツに学校指定の黒いジャージズボンを履いた廉がウォーミングアップの為のストレッチをしているのが見えた。
相変わらず廉を見学する女子のギャラリーが多い。
やがて選手たちは白い線が引かれたグラウンドのスタート地点に立ち、ホイッスルの音と共に一斉に走り始めた。
走るのが苦手な私から見ると、どの選手も自信満々に見えて別世界の人間に見える。
4番目の列に廉の姿があった。
ホイッスルが鳴り、廉を含んだ選手達が一斉に走り出す。
廉はグングンと2位以下の選手を引き離し、圧倒的な速さでゴールした。
女子達の黄色い歓声が響く。
その颯爽としたしなやかな走りは、見ているすべての人間を魅了した。
もちろん私もその例外ではない。
あんなに恰好いい男子が自分の義弟だなんて、本当なら周りの皆に自慢したい。
けれど廉に学校では話しかけないで、と頼んだのは自分だ。
あれ以来廉は、私の教室へ来ることはおろか、廊下ですれ違っても視線さえ合わせなかった。
それは安堵とともに、淋しさをも運んで来た。
廉がクラスメートの女子と話しているのを見ると、なんだか胸がちくちくする。
廉は私との約束を守ってくれているだけ。
私が淋しいと思うなんて、身勝手すぎる。
そう思いながら窓の外の廉をみつめていると、廉が顔を上げた。
廉の視線が私の方を向いてるような気がして、思わず目を逸らす。
すると廉は一瞬だけ、私だけにわかるように、片手を上げ小さく手を振った。
心臓がどきんと音を立てる。
遠慮がちに私も小さく手を振り返す。
廉は大きく身体をジャンプさせると、再びグラウンドの方へ歩いて行った。
しばらくすると障害物競争の練習がはじまった。
あずみの姿も見える。
あずみが綺麗なフォームでハードルを越えていく姿が格好いい。
心底運動神経の良い人が羨ましかった。
彼等なら大きな障害も困難も軽く飛び越えていきそうだから。