義弟の恋人
女性は途中コンビニで買い物をし、再び駅へ向かう。
駅に近づくにつれ行きかう人が増え、尾行しづらくなり、つい近づきすぎてしまったのがいけなかったのかもしれない。
女性は改札を抜けようとしたところをくるりと回れ右をし、今来た道を戻っていく。
そして柱の影に隠れていた私の目の前に立ち、サングラスを外してみせた。
初めて真正面から見たその女性の顔は、美しさとともに歪ななにかを感じさせた。
女性の強い視線を受け戸惑う私の耳に、冷たく低い声が響いた。
「あなた、誰?」
「・・・・・・。」
押し黙る私に女性はイライラした口調で言い募った。
「私のこと、つけてきたのよね?」
「・・・はい。」
私は観念してそう頷いた。
女性は私を頭の先からつま先まで眺め、鼻で息をした。
「興信所の人間にしては若すぎるし、一体誰よ。私に何か用があるわけ?」
私は意を決して告げた。
「私は五代廉の・・・家族です。」
女性はプッと吹き出して笑った。
「廉の家族?何それ。変なこというのやめてよ。あなた妄想癖があるんじゃないの?あ、もしかして廉のストーカー?廉と同じ学校の子?廉、イケメンだし、あなたみたいな頭のおかしいファンがいても不思議じゃないものね。」
「本当です!家族になったのはつい最近ですけど・・・。」
「じゃあ廉の両親の名前、言ってみなさいよ。家族ならわかるはずよね?」
私は間髪入れずに言った。
「廉のご両親の名前は誠一郎さんと冬実さんです。」
「・・・・・・。」
「そして冬実さんは私の父である一宮圭亮と今年の春再婚して・・・現在私の義母です。」
その言葉に女性が大きな衝撃を受けているのが判った。
女性は大きく目を見開き、私の顔を穴があくほどみつめた後、ぽつんとつぶやいた。
「じゃあ・・・あの女、再婚したの?」
この女性は冬実さんを知っている?
「冬実さんが再婚したのは、誠一郎さんが亡くなったからで」
「そんなこと私が一番よく知ってるわよ!」
女性は泣きそうな声でそう叫び、その声に周りを歩く通行人が何人か振り返る。
私の言葉が本当だと信じた女性は、さきほどまでの馬鹿にした様子からは打って変わり、真面目な目で私を見て言った。
「ねえ。どこかで少し話さない?」
駅に近づくにつれ行きかう人が増え、尾行しづらくなり、つい近づきすぎてしまったのがいけなかったのかもしれない。
女性は改札を抜けようとしたところをくるりと回れ右をし、今来た道を戻っていく。
そして柱の影に隠れていた私の目の前に立ち、サングラスを外してみせた。
初めて真正面から見たその女性の顔は、美しさとともに歪ななにかを感じさせた。
女性の強い視線を受け戸惑う私の耳に、冷たく低い声が響いた。
「あなた、誰?」
「・・・・・・。」
押し黙る私に女性はイライラした口調で言い募った。
「私のこと、つけてきたのよね?」
「・・・はい。」
私は観念してそう頷いた。
女性は私を頭の先からつま先まで眺め、鼻で息をした。
「興信所の人間にしては若すぎるし、一体誰よ。私に何か用があるわけ?」
私は意を決して告げた。
「私は五代廉の・・・家族です。」
女性はプッと吹き出して笑った。
「廉の家族?何それ。変なこというのやめてよ。あなた妄想癖があるんじゃないの?あ、もしかして廉のストーカー?廉と同じ学校の子?廉、イケメンだし、あなたみたいな頭のおかしいファンがいても不思議じゃないものね。」
「本当です!家族になったのはつい最近ですけど・・・。」
「じゃあ廉の両親の名前、言ってみなさいよ。家族ならわかるはずよね?」
私は間髪入れずに言った。
「廉のご両親の名前は誠一郎さんと冬実さんです。」
「・・・・・・。」
「そして冬実さんは私の父である一宮圭亮と今年の春再婚して・・・現在私の義母です。」
その言葉に女性が大きな衝撃を受けているのが判った。
女性は大きく目を見開き、私の顔を穴があくほどみつめた後、ぽつんとつぶやいた。
「じゃあ・・・あの女、再婚したの?」
この女性は冬実さんを知っている?
「冬実さんが再婚したのは、誠一郎さんが亡くなったからで」
「そんなこと私が一番よく知ってるわよ!」
女性は泣きそうな声でそう叫び、その声に周りを歩く通行人が何人か振り返る。
私の言葉が本当だと信じた女性は、さきほどまでの馬鹿にした様子からは打って変わり、真面目な目で私を見て言った。
「ねえ。どこかで少し話さない?」