義弟の恋人
「奈美子とは大学時代の友人でね、あいつ美人だろ?結構モテてたんだよね。」
「はい。」
「でも気が強いからさ、彼氏がなかなか出来ないみたいで。僕によく相談してきたよ。また男性に厳しいこと言っちゃったってね。」
「・・・・・・。」
「大学を卒業して会社に勤めだすと奈美子とは疎遠になっていたんだけど、ある日偶然なじみのカフェバーで出会ってさ。奈美子の隣にはあきらかに歳の離れた男性が座ってた。すぐにピンときたよ。こいつ、既婚男性と付き合ってるんだなって。でも奈美子の顔が幸せそうでなにも言えなかった。」
きっとその男性が廉の父親、五代誠一郎なのだろう。
私は目を伏せたまま、そう理解した。
「でもその後、その彼氏と別れて、奈美子、人が変わったように荒れだして、精神的にもボロボロになって・・・。自暴自棄っていうか、自分も人も傷つけるようになった。でも」
吉沢さんは眉を下げて私を諭すようにみつめた。
「奈美子、本当は優しいヤツなんだ。街角の募金にすぐ寄付してしまうようなね。君の義弟にしていることもただ誰かに依存しないと生きていけないからなんだ。」
「だからって・・・許されることなんですか?」
私の言葉に吉沢さんはしばし黙りこくった。
「自分が傷ついてるからって、他の誰かを巻き込んでもいいんですか?」
「ごめん。」
吉沢さんが泣きそうな声で訴える私に頭を下げた。
「僕は奈美子を友達としてただ見ていることしか出来なかった。でももうそれはやめる。」
吉沢さんは力強く私に向かって誓った。
「これからは奈美子を僕が支える。廉君を君が守ろうとしたように。約束する。」
「吉沢さん・・・。」
そのとき喫茶店の扉が、音を立てて乱暴に開いた。
振り向くと、そこには背の高い廉の姿があった。
廉は店内を見回し、私の姿をみつけると駆け足で近づいて来た。
「廉・・・」
吉沢さんも廉の姿をみとめると、口元だけで微笑んだ。
「噂の彼の登場だね。」
廉は私と吉沢さんを交互に見たあと、私に向かって強い口調で言った。
「皐月・・・何してんだよ!」
「廉・・・。」
すると今度は吉沢さんを鋭く睨みつけた。
「皐月は連れて帰る。」
「もちろん、そうしてもらわないと困る。僕も犯罪者にはなりたくないからね。一応言っておくけど彼女には指一本触れてないよ。ただ昔話をしていただけだ。」
そう言って吉沢さんは両手を上げた。
廉の視線を受け止めた私も、大きく頷いた。
廉は私の腕を引き上げ、立ち上がらせた。
「吉沢さん・・・あの」
私が何か言おうとするのを止めるように、吉沢さんは大きく笑った。
「はははっ。皐月ちゃん、僕が悪い男じゃなくて良かったね。もう無茶しては駄目だよ。」
「皐月、行くぞ。」
廉に右手をきつく握られ引っ張られた私は、かろうじて吉沢さんに頭を下げた。
「はい。」
「でも気が強いからさ、彼氏がなかなか出来ないみたいで。僕によく相談してきたよ。また男性に厳しいこと言っちゃったってね。」
「・・・・・・。」
「大学を卒業して会社に勤めだすと奈美子とは疎遠になっていたんだけど、ある日偶然なじみのカフェバーで出会ってさ。奈美子の隣にはあきらかに歳の離れた男性が座ってた。すぐにピンときたよ。こいつ、既婚男性と付き合ってるんだなって。でも奈美子の顔が幸せそうでなにも言えなかった。」
きっとその男性が廉の父親、五代誠一郎なのだろう。
私は目を伏せたまま、そう理解した。
「でもその後、その彼氏と別れて、奈美子、人が変わったように荒れだして、精神的にもボロボロになって・・・。自暴自棄っていうか、自分も人も傷つけるようになった。でも」
吉沢さんは眉を下げて私を諭すようにみつめた。
「奈美子、本当は優しいヤツなんだ。街角の募金にすぐ寄付してしまうようなね。君の義弟にしていることもただ誰かに依存しないと生きていけないからなんだ。」
「だからって・・・許されることなんですか?」
私の言葉に吉沢さんはしばし黙りこくった。
「自分が傷ついてるからって、他の誰かを巻き込んでもいいんですか?」
「ごめん。」
吉沢さんが泣きそうな声で訴える私に頭を下げた。
「僕は奈美子を友達としてただ見ていることしか出来なかった。でももうそれはやめる。」
吉沢さんは力強く私に向かって誓った。
「これからは奈美子を僕が支える。廉君を君が守ろうとしたように。約束する。」
「吉沢さん・・・。」
そのとき喫茶店の扉が、音を立てて乱暴に開いた。
振り向くと、そこには背の高い廉の姿があった。
廉は店内を見回し、私の姿をみつけると駆け足で近づいて来た。
「廉・・・」
吉沢さんも廉の姿をみとめると、口元だけで微笑んだ。
「噂の彼の登場だね。」
廉は私と吉沢さんを交互に見たあと、私に向かって強い口調で言った。
「皐月・・・何してんだよ!」
「廉・・・。」
すると今度は吉沢さんを鋭く睨みつけた。
「皐月は連れて帰る。」
「もちろん、そうしてもらわないと困る。僕も犯罪者にはなりたくないからね。一応言っておくけど彼女には指一本触れてないよ。ただ昔話をしていただけだ。」
そう言って吉沢さんは両手を上げた。
廉の視線を受け止めた私も、大きく頷いた。
廉は私の腕を引き上げ、立ち上がらせた。
「吉沢さん・・・あの」
私が何か言おうとするのを止めるように、吉沢さんは大きく笑った。
「はははっ。皐月ちゃん、僕が悪い男じゃなくて良かったね。もう無茶しては駄目だよ。」
「皐月、行くぞ。」
廉に右手をきつく握られ引っ張られた私は、かろうじて吉沢さんに頭を下げた。