義弟の恋人
「皐月!」

教室のドアからいつものように廉が顔を覗かせる。

それを見たあずみが肩をすくめる。

「毎日ああやって皐月の顔を見に来るなんて、五代君よっぽど皐月を慕ってるんだねえ。」

「まあ・・・義姉弟(きょうだい)だからね。」

当然のごとく学校では私と廉の本当の関係は内緒だ。

でも秘密の恋はけっこう楽しい。

「ほら、早く行きなよ。」

あずみに押されて私は廉に近寄った。

「なあに?今日は何を忘れたの?」

「何をって・・・朝のキス。」

「廉!な、なに言ってるの?ここ、学校!教室の前!」

「もう、良くない?俺、皐月が俺のモノだって言いふらしたくて、うずうずしてんだけど。」

「わーっ!」

私が廉の口に手の平を当てると、廉はその手を握りしめ、その甲に軽くキスをした。




「あーあ。よくやるよ。」

あずみは皐月と廉の様子を眺めながら、にやにやと笑い、その後真顔でふーっとため息をついた。

「まったく・・・皐月が五代君と付き合ってるのみーんな知ってるのに、それに気づいてないのは皐月だけ。おめでたいというか鈍感というか・・・でも、まあ二人がハッピーならそれでいいか!」






fin

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