真白に包まれて眠りたい
 何かに打ち込んでいる人が好き。そういいながら私は毎日をただなんとなく生きている。
 将来の夢、自分のやりたいこと、そんな答えに困る問いが、私は昔から苦手だった。
 朧げに覚えている、幼いころに大人に伝えた将来の夢は、お嫁さん、パン屋さん、ケーキ屋さん、会社員。今ではまた、お嫁さんだ。あのころと違うのは、それを心から思っていることだ。夢も野望もいらない、大切な人のそばで息をしていたい。望んでいるのはそれだけで、でもそれがいつまでも叶わない。人と一緒にいるのは、存外難しいものだと知った。

 ずっと、好きなものは何か、と聞かれて答えられなかった。特に思いつかなかった。寝ることだと答えていた反抗期もあった。もちろん寝るのは今でも好きだが、最近は不眠気味であるからこそかもしれない。
 好きなものを答えられなかったのは、好きなものがなかったからではなかった。あの頃と今とでは、私はほとんど変わっていないが、私は答えられるようになった。自分の好きなものが、他人も同じく好きだということが、誤りだと気づいたからである。寝る、食べる、誰かと話す、そんなこと誰だって好きだろうと思い込んでいた。
 私は、書くことが好きだ。表現することが好きだ。高度なものは求めない。たとえ稚拙であろうと、私のことを書き出せたらそれで満足だ。誰かに伝えたいという気もない。形にしたいだけである。

 この小説は、そんな私の戯言の集まりである。きっと、数年後に読み返したら面白いに違いない。毎年、ひとつの作品としてまとめあげられたらおもしろそうだと思っている。だが、おそらく続かないだろうなと予想している。
 書きかけの章も、それはそれで、中途半端な今ということ。
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