真白に包まれて眠りたい
13.母親

 最近、母親に話が通じないことが増えた。勘違いや思い込みが増えた。昔はそうは思わなかったのは、私が母しか知らなかったからか、私が変わったからか、母が変わったからか、別に理由を知りたくはない。
 話が通じないと、話をする気が失せる。意見が違うのは構わないが、話を理解していないのは困る。厄介なのは、彼女自身は、「自分は同世代の他の人と比べて今の時代の考え方にも理解があるし、私はそれなりに頭がよくて話が通じる」と思っているところである。もし、今の時代の考え方に理解がなくても、頭が悪くても、自分でそれを理解していて、わからないことを認め、受け入れられているのなら構わない。だが母は話を間違った認識で理解している。自分で理解していると思っているからこそ人とずれているなんて疑わないし、結局相手が適当に話を合わせることになる。こんなことが増えたのはここ最近だ。
 1年前くらいまでは母が大好きだった。ただ生まれたときから一緒にいて育てられて一番長く接しているから、というだけではなく、一緒にいて楽しい、話をしていて楽しい、理解してくれる、だから好きだった。最近はそれが変わってしまったのだと思う。母は私の話を正しく理解してくれない。何より嫌なのは、彼女は普通というものにこだわり、多様性に苦手意識があることだ。もちろん前述したような性格なので、多様性に理解がある顔はしているし、口先だけの言葉も良く言う。「まあ今は多様性だよね」、「一応多様性に理解あるほうだからさ」なんて。本当に多様性に理解があるならそんな言葉すら口にしない、まず思いつかないと思う。多様性に理解は示しているつもりだがやっぱり許容できないとか、多様性にうるさい友達がすこしうざったいだとか、そんなことを私に話してくる。聞きたくない。その話をしている母は嫌いだ。
 そう、ここ最近、母と一緒にいたくないと思うことが増えた。悪い影響を与える頻度が増えてきた。母は人を振り回す。夏の夜にはいい思い出がない。いつも花火を見るか見ないかで喧嘩してばかりだ。人に可愛く甘えることをよしとしている。心底気持ちが悪い。母は人付き合いが苦手なはずだ。あの性格で友達ができるわけがない。そう思うが案外友達はいるらしい。不思議だ。
 話がそれた。最近母親に話が通じない。そのたびに会話を諦め、母自体を避けてしまうことが、悲しくてたまらない。だけど、もう私の成長に母は必要ないのだと思う。
< 14 / 56 >

この作品をシェア

pagetop