真白に包まれて眠りたい
14.梅雨と冬

 彼に好きな季節を聞いた時の返答だ。彼らしくて好きだと思った。
 私はあえてひとつ選ぶのなら秋だ。私も彼も、嫌いな季節などなく、全てが好きだ。
 彼の見ている季節と私のそれとでは大きく異なるのだろうと思う。彼は現実主義者に見えて時折理解不能なことを言う。
 私は梅雨は嫌いだ。嫌いな季節などない。勿論それは大前提だ。その上で梅雨が嫌いだ。清々しい太陽光を浴びれない。湿度が高く蒸し暑い。だけどなんとなく世界が静かになったような、洗い流されていくような外の世界はたまらない。だがやはり蒸し暑いのは苦手だ。
 冬は好きだ。冬の香りが好きだ。雪は滅多に降らないが、好きだ。冷たさは浄化の力を持っている。冬の冷気で洗われていく気がする。だが勿論こたつからは動きたくない。冬はあの温度差が好きだ。世界の冷たさと、家の暖かさを知れる。冬のこたつと夏のクーラー以上に幸せを感じられるものはあるだろうか。……まあ、勿論沢山ある。何せ秋の方が好きですからね。
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