イケメン御曹司は恋に不慣れ
「あ、はい、すみません。部長の周りにはいろいろな方がいらしたので行きそびれてしまって…」
焦る私は周りに目を向けるが職場の人たちは部長に関わりたくないのか、絡まれたのが自分ではないことに喜んでいるのか誰も私を助けてはくれない。
「僕が人気者だから、川越ちゃんは遠慮しちゃったのかな?」
ニヤリと笑う顔が怖かった。身体が硬直し何も言えずに俯いた。
「じゃあ、この後は僕に付き合ってよ」
「………」
私は言われたことがすぐに理解できなかった。
付き合うって何?無言のままでいる私に部長は話を続けた。
「そんな初心な反応して、もしかして男を知らない? それとも照れてるのかな? ホント川越ちゃんは可愛いな」
肩に回っていたはずの手が腰に移動し、他の人達とは別の方向に進み出した。誰かに気づいてほしくて振り返ろうとする動きは腰に回された腕が制してきて出来なかった。