イケメン御曹司は恋に不慣れ
あれは1か月くらい前のこと。
仕事を失くして落ち込む私に姉が一緒にご飯を食べに行こうと誘ってくれた。
そして、姉が来るのを待っていた時のこと。
スマホをバッグから出して新しいメッセージがないことを確認してから、途中まで読んでいた小説の続きを読みはじめていた。
その数分後、目の前に人の気配を感じて顔をあげると、私をジッと見てくる男の人が前に立ち塞がるように立っていた。
「ねぇ、お姉さん。一人?」
心の中で『誰、この人?』と思いつつも「私ですか?」と返事をする。
その返事に目の前に立つ男が「そう」と頷いたので、これ以上話しかけてもらいたくない私は間をあけずに応える。
「すみません。私、待ち合わせしてますから」
だいたいこんな目立つ場所で立っていたら誰かと待ち合わせていることくらいわかりそうなものなのに…この人なに言ってんの?
そう思ってしまい、こんな所でこんな風に気安く話しかけてくる目の前の男性を不審な目で見ていた。