イケメン御曹司は恋に不慣れ
「ひまり!」
「え!? お姉ちゃん」
「ひまりの新しい職場っていう、ここだったの?」
「うん、そう。あっ、お姉ちゃん、そろそろ始まるからごめんね」
ふと視線を感じて、慌ててキッチンに戻る。
まさかの姉の登場に驚いて、自分の役割を忘れそうになった。
きっと感じた視線の持ち主はオーナーだと思ったから、なおさら焦る。
ここに勤めだして初めて知り合いが来店したこともあり、失敗はできないと思いさらに気合いを入れ直す。
「お姉ちゃんがいるなんていつも以上に緊張するけど頑張ろう」
デザートのサーブも終え、パーティーが終盤にさしかかる頃、姉が私に近づいてきた。
「ひまり、お疲れさま」
「あ、お姉ちゃん。新婦さんはもちろんだけど、今日のお姉ちゃんも綺麗だね」
「もう、なに言ってるの。それより、ひまりに紹介したい人がいるんだ」
「え? 私、まだ仕事中なんだけど」
「ちょっとだけ、ね?」
「仕方ないな。本当に少しだけだよ」