イケメン御曹司は恋に不慣れ
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です…」
「顔色が悪いようだが、本当に平気か? あいつだったんだろう?」
「え? あいつって?」
「あの5番テーブルの男がお前にセクハラしてた奴なんだろう」
「なぜ、そのことを…」
「芹菜から聞いた。あいつなんだろう?」
あの時の恐怖を思い出した今の私にはコクンと頷くことしかできない。
運転中の浩介さんは気がつかなくてもいいと思っていた。
「そうか…。大変だったな。今でも男が怖いか?」
浩介さんからそんなことを言われるなんて考えてもいなかった私は驚いて運転席にいる浩介さんを見てしまった。
ちょうど信号で止まったところで、そこには苦々しそうな顔をして私を見つめる浩介さんがいた。
「お前はもう苦しまなくていいよ。俺が何とかしてやる。だから、泣くな」
「な、泣いてなんか…」
いませんって言うはずだったのに、膝の上に涙がこぼれてしまい私はしばらく涙が止まらなかった。