イケメン御曹司は恋に不慣れ
「ひまり!」
遠くから私を呼ぶ声が聞こえてきた。
声の聞こえた方を振り返ると近くに部長がいて、もうだめだと思った。
恐怖で動かなくなった足を動かさなくてはと思っていた。
次の瞬間、部長を押さえつける男性と私に向かって走ってくる浩介さんが見えた。
「ひまり、大丈夫か?」
心配する声と同時に抱きしめられた。
浩介さんの腕の中で涙をこぼしながら、コクコクと頷いた。
部長は浩介さんが雇っていたボディガードに拘束され、そのままどこかに連れていかれた。
「ひまり。あの男は国外に異動させるからもう心配いらないよ」
「国外に異動って…」
「あいつは当分、日本には戻れない。本当は解雇にしたかったんだがな。さすがにそこまですると後が怖いだろう」
ニカッと笑顔を見せてくれるのが嬉しい。