イケメン御曹司は恋に不慣れ

ドキドキとうるさく鳴る胸の鼓動を感じ、私の瞳は目の前に立つ美麗な男性に釘付けになってしまった。
固まっている私を見ていたその男性は彼の腕につけられた高級そうな時計に目をやり時間を確認すると、私に向かって「じゃあな」と一言発すると身を翻した。
行ってしまうと思ったところでお礼を言っていないことに気がつき、咄嗟にその人のジャケットの裾を掴むと再び振り返った男性は冷たい視線を向けて言った。

「あ…。ま、待って…」
「手!」
「えっ? 手?」
「俺を引き止めてどうする気? とにかく、あんたは俺の好みじゃないからさ、手を放せよ」

冷ややかな視線とともに発せられた言葉に『…私…なにを言われたの?』と呆気にとられる。
彼の言葉が理解できなくて一瞬頭が真っ白になったが、ハッと気がつき今度はカーッと顔が熱くなる。
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