人気イケメンダンスグループのボーカル担当『天野先輩』に溺愛されました。
 目覚めるといつの間にか辺りは暗くなってきていた。眠ったらお腹の調子がさっきよりもよくなってきていた。

 何時かな?と、スマホを見たタイミングで、ちょうど天野先輩から電話がかかってきた。

「えっ? なんで?」

 驚きながら急いで電話に出た。

「天野先輩、どうしたんですか?」
「あ、あのちゃん、LINEしたんだけど既読つかないし。体調悪いって、大丈夫?」

 早口ですごく慌てている様子。

「あ、はい。ひと眠りしたらよくなってきました」
「そっか。今日ひとりだって聞いていたから心配で。今、家の前にいるんだけど……」
「どうして? お仕事はどうしたんですか?」

「終わったよ! あのちゃんのSNSのつぶやきを見て、急いでここに来た」

 つぶやき……。
 私が寝る前に呟いたやつだ。

「というか先輩、なんで私のSNSのアカウント知ってるんですか? いや、それよりも、今玄関の鍵開けます」

 急いで階段をおりた。

 玄関にある全身鏡で自分をチェックし、髪の毛を整えて深呼吸してから玄関のドアを開けた。

 ドアを開けたら、本物の先輩が立っていた。音楽祭で会えなくて、まさかうちで会えるなんて。

「大丈夫?」

 マスクをしていた先輩は眉をへの字にして私を覗き込んだ。

「はい、大丈夫です。あ、待ってください」

 私もマスクをつけないと。急いでリビングへ行きマスクをつけてきた。もしかしてこの腹痛は風邪かもしれない。先輩に私の風邪菌なんてうつしてはいけない。

 もしも先輩に風邪をうつしてしまったら、イベントに行けなかった時よりも、かなしくて後悔してしまうと思う。

 個人のお仕事はキャンセルになっちゃうし、前に先輩のグループのメンバーが風邪で仕事ができなかった時はメンバー内でフォローをし合って仕事を回していた。

 先輩がもしも風邪をひいてそうなってしまったら先輩は自身を責めてしまい、今後の活動に支障をきたしてしまうかもしれない。それはさけたい。

 マスクを装着すると、玄関の中に入っていた先輩と距離をおいて立った。
< 29 / 41 >

この作品をシェア

pagetop