人気イケメンダンスグループのボーカル担当『天野先輩』に溺愛されました。

「大切な右腕……。僕のためにごめんなさい。もしも私生活で何か支障をきたすことがあれば、僕が右腕になります」

　今にも涙が出てきそうなウルウルとした瞳で先輩はそう言った。

　どうしよう。周りは大袈裟に騒いでいて、天野先輩もすでに私が怪我をしていて右腕動かせないって思ってそうだけれど。

　冷静になって腕をちょっとだけ動かして確認してみると、いつも通りに動くし、痛さもほんの数ミリぐらいしかなかった。日常生活に支障をきたすことはないと思う。

　正直に「大丈夫です」と言おうとする自分。

　でももうひとりの心の中の自分が話しかけてくる。

「これは、憧れの天野先輩とお近付きになれるチャンスよ」と。

　今までしてきた天野先輩への推し活と、先輩への気持ちが頭の中をぐるぐると巡る。