人生は虹色
夕暮れ時、自動車ディーラーの大手で、勤務する航は自動車の修理に追われていた。



ところどころ黒くなった作業着に、

爪の中まで入り込んだ汚れ、

疲弊しきった顔から過酷な労働環境が伝わってくる。



容赦なしに次々と、修理や部品交換、

点検の業務が待ち寄せていた。



「航、それ終わったらサーモスタットの交換頼むわ！」



同僚の荒嶋《あらしま》は抱え込む業務に、手詰まらせながら、部品交換作業に追われていた。



「おう！」



航はソケットレンチでボルトを締め直し、作業は終わりへと向かっていく。



今日は土曜日もあってか、やけに忙しい。



五人いた従業員は急かされるように、作業していた。



人手不足に過酷な労働環境の下でも、

航は柔軟に対応ができ、

職場では期待される程だった。



最終確認をしていると、急に左肩から左腕にかけて、強い痛みを覚えた。



航が持っていたソケットレンチは地面に転げ回り、左肩を押さえるように、気づけば座り込んでいた。



ソケットレンチが転がる音で気づいたのか、近くにいた仲間達はかけ寄り心配する。



「おい、大丈夫か？！」



航はただ顔を歪めてばかりで。



気が遠のいていたのだろうか。


鳴り止まない心配の声にパッと気づき、それと同時に痛みは和らいでいく。



「あっ大丈夫っす！」



たかが肩や腕の痛みだけなのに、冷や汗までかく始末。



だけど、数秒で治ったのもあり、

航は疲労のせいにして、

何事もなかったように作業を続ける。



平然と作業に戻る航を見た仲間達も手につけていた作業に戻って行った。
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