人生は虹色

辺りが暗くなった頃には、

作業もひと段落し、

閉店時間になっていた。



航は喫煙室で一人、

タバコを吹かしながら寛ぎ、

ケータイを見ていた。



すると、そこへ荒嶋がやって来る。



「おっつー！」



荒嶋はタバコに火をつけると、仕事終わりの一服を味わうように、しゃがみ込んだ。



「お疲れ！」



「いやー、今日はさすがに疲れたな！」



「ホントそれな！手間のかかるやつばっかだったわ」



航は力なく笑いながら、振り返るように言った。



「いや、それ分かる！コンロッド何回、変えたことやら」



「エンジ系のトラブルばっかだったんじゃな〜」



「ああ。それで肩や腰、痛めたわ。航はいいよな〜！明日休みじゃろ？」



「そうじゃ。町内で秋祭りあるけんな〜」



「ええな〜」



「ええもんじゃないぞ。神輿の警備に、屋台の手伝いまでせんといけんからな！」



航は消防に入っているため、神輿を担いで回る子ども達が安全に回れるよう、警備の担当を任されていた。



それに、子ども会の出し物で、

焼きそばを焼くのも請け負い、

休む暇などないだろう。



「へ〜大変そうじゃな」



「おん。休む暇やこ、ねえかもしれん」



「よーやるわ、休みの日も！」



「まぁ、役員じゃし！しょおがねえわ」



航は社交性で何より、人と関われる場を好んでいた。



まだ知らない知識を知ること、相談され慕われることが何より好きだったのかもしれない。



「俺にはよー分からん。消防にＰＴＡに子ども会、ホントよーせんわ」



荒嶋は理解に苦しみながらも、

心の中では同い年として、

周りから尊敬される航に、

羨ましさという嫉妬が生まれていた。



「はは、まあ分からんじゃろうな」



「まぁ…でも、あんま無理すんなよ！今日だって……」



荒嶋は航が今日、疼くまりながら、肩を抑えていたことをずっと心配していた。



荒嶋の言おうとした言葉に察したのか。



航はいち早く反応するかのように、荒嶋に感謝するかのように、口を開いていた。



「心配すんな。秋祭り終わったら、ゆっくり休むけん」



「はは、そうかい。まぁ、明日頑張ってくれや！」



荒嶋は平然と振る舞う航に安堵したのか、心配は安心に変わっていく。



「おう。ありがとな」



「お疲れ！」



タバコを吸い終えると、荒嶋は手を小さく振りながら帰って行った。



「おう、お疲れ！」



航もタバコの火を消し、重たくなった腰を持ち上げるように、自宅へと帰って行った。