人生は虹色
*
「——何で冬にすんだよ?!」
僕は身体を震わせながら、バーベキューコンロへと手を翳し、暖をとる。
タバコを口に咥えたまま、航兄ちゃんが倉庫内から椅子やテーブルなどを引っ張り出してやって来た。
「何でって?冬にするから楽しんじゃねえか!」
ニット帽にダウンジャケット。
雪国で雪掻きをするおじさんのような格好。
物凄く寒そうにやっているというか……。
僕は呆然と眺めるだけで、バーベキューコンロの温もりから一歩でも離れたくなかった。
「いや……でもさ、さみぃから中でしたらいんじゃね?ホットプレートでさ」
「たくっ、お前は分かってねぇな!中ですんのと外ですんのじゃあ、全然違うんだよ」
こんな寒い日に、外でBBQをしたいという航兄ちゃんの強いこだわりは、僕の冷え切った身体には響かなかった。
「何が違うんだよ?ただ寒いだけじゃん!」
「バカだなぁ。寒いからこそ、沁み渡るんだろ!」
「え?沁み……渡る?」
航兄ちゃんが苦戦しながら、椅子やテーブルを組み立てているのに見兼ねたのか、僕は一緒に組み立てるのを手伝っていた。
「はは、少しはやる気になったか?お前にはよく沁み渡るはずだぞ!」
「……」
何か分からないけど沁み渡るというキーワードだけで、勝手に手と足は動き出す。
こだわってまでしたい冬のBBQに、少しだけ興味が湧いてきた。