人生は虹色
「———よーし!まだ確定ではないが、残りわずかだ!

残り三ヶ月で文理選択、はっきり決められるようにしとくんだぞ!」



今田は回収したクラス全員の用紙を整理し、自慢の眼鏡に手をやる。



「余った時間は自習にする。

先生は職員室に行くから、各自何かしといてくれ!いいな?」



今田の話しを聞くや否や、教室内は歓喜の渦となっていた。



今田は笑みを浮かべるだけで注意もせず、教室から出て行く。



クラスメイト達の声量が大きくなる中、森本さんが立ち上がり、浮かない顔をして教室から出ていくのを僕は目で追った。



急いで僕も立ち上がり、後を追いかける。



別に興味があるわけでもないのに、身体が勝手に動くとか、なんか変なの。



ああ、なんか、同じ匂いがするんだよな。




教室から飛び出した僕は森本さんに尋ねる。



「どこ行くの?」



「……え?」



僕の声にびっくりした様子で、森本さんはこちらを伺っていた。



「あ……トイレ」



「え!トイレ?そっちじゃなくない?」



「あっえーっと……別によくない?私がどこに行こうと!一ノ瀬くんには関係ないんだからほっといて!」



僕は廊下で眩しい陽射しに照らされながら、何かを吐き出せない彼女が離れていくのを見守ることしかできなかった。


あんなに怒ることないのに……。



家庭環境や住んでいる環境が違えど、同じ人間だ。



浮かない顔してる奴に心配しない奴なんていないよ。



チャイムが鳴るまで森本さんは帰ってこなかった。



僕たちはその後、

一言も喋らずに学校を終えた。
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