人生は虹色
「ちゃんと思ってること、したいこと言わねえとオカン達もお前のことなんて分かんねえし、今のお前はただ逃げてるだけだぞ!

オカン達とぶつかって、喧嘩になることを恐れてちゃあ、ずっと変わんねえからなッ!」



「分かっ……てるよ、そんなこと。ただ……バッって思っても口から吐き出せないんだよ」



航兄ちゃんに喝を入れられ、

僕は言葉を詰まらせていた。



航兄ちゃんの言ってる通り。



頭では分かっていても行動に移せない。



自分の悪いところぐらい、

自分が一番分かっている。



航兄ちゃんの放った一文字一文字の言葉が僕の胸へと突き刺さった。



「吐き出せない?」



「俺だって反論したいよ!

心では『このクソ野郎』や『ふざけんな』って思うんだけど、ただ……口から吐き出せないだけ。

航兄ちゃんの言った通り、恐いんだよ……。

俺には勇気がないし、ただ臆病なだけだから……」



「じゃあ、俺から言ってや……」



「いや、それはいい!」



僕は航兄ちゃんが何を言おうとしたのかをいち早く察知し、真っ先に口を動かしていた。



航兄ちゃんのことだ。



弟思いの航兄ちゃんなら、

何となくしてくれそうなことぐらい思いつく。



優しさに溢れた気持ちだけで十分だった。



「だって、このままだと一生言えないだろ?」



「ちょっとだけ待ってよ。俺だって男だし、言うんだったら自分の口から言いたい」



「そ……そうか」



「その代わり、母さん達とぶつかって『出ていけ』って言われたら、面倒見てよね」



「はは、心配すんな!そん時は、うちに入れてやるさ。だから、親とぶつかるの恐れるな」



僕の冗談混じりの言葉に、

航兄ちゃんは笑顔で返してくれ、

少しだけ安堵する。



航兄ちゃんは昔から変わらず、

航兄ちゃんのままだ。



僕のことを気にかけ、背中を押してくれる航兄ちゃんがホントに大好きだった。



僕達はボールを投げ合い、あの時のように笑ってキャッチボールを楽しんでいた。



時間も忘れ、想いを一球に込めて。



ありがとう、変われるきっかけを作ってくれて、と。
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