人生は虹色
「——えー、今日はわざわざ学校までお越し頂き、ありがとうございます」



「いえいえ」



今田と母さんは顔を合わせ、

二度も三度も会釈を繰り返していた。



三人とも席に座ると、今田がすぐに口を開らく。



「早速なんですが、一ノ瀬君の学校生活についてからお話しします」



「はい」



「一ノ瀬くんはですねぇ、活発に行動するタイプではないものの、クラスメイトの子達とは、良い距離感で仲良くやってます。

面倒見がよくてですねぇ、気遣いのできる優しい子ですね。

あとは、部活動は今のところ、何も入られてないみたいなので、何か夢中になれるものが見つかればいいのかと……」



今田から見る僕の人物像や性格を、

そう思ってくれていたんだと何だか嬉しくなり、

改めて今田のことを感心したほどだった。



だけど、穏やかだった気持ちも母さんの次の言葉で冷めていった。



「部活ですかぁ、中学はバスケやってたんですけどねぇ!お兄ちゃんとは違って続きませんでした」



嫌味のある言い方。



また兄ちゃん達と比べられ、

無性に腹が立ったが、ぐっと堪えた。



「バスケ部ですか?うちにもバスケ部はありますし……一ノ瀬、どうだ?やってみないか?」



「いや、いいです。興味ないんで」



力がこもることなく、

ポロッと口にした僕は中学の時、

バスケ部に所属していた。



ごくせんにでていたヤンクミみたいな顧問が怖くて、怒られないよう必死に練習したっけ?



そのおかげもあってか、

地区選抜に選ばれるまでバスケが上手くなった。



でも……





心の底からバスケが好きじゃなかった。



部活をやらされている感があって素直に喜べない。



仲間たちと楽しく、

笑い合ってバスケがしたかっただけ。



中学のトラウマがあって、

高校では部活なんてしたくなかった。



「そうか……まぁ、三年間のうちに何か部活動を検討してみてくれ!」



「……はい」



僕は適当に返事をするだけだった。
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