人生は虹色
「さぁ、ご飯出来てるから早く座って。仁には謝らないといけないことがあるから。ね?ほら、座って座って!」



「えっ!……うん」



「帰ってこなかったらどうしようかと思ったけど、帰ってきてくれてよかったわ」



母さんは力なく笑いながら、

ぎこちない空気を変えようと必死だった。



その隣で寡黙に様子を伺う父さんも何があったか、母さんから聞いているのだろう。



なんだかソワソワしているように見えた。



あんなに酷いことを言ったのに、

どうして怒らないのか?



子が親に暴言吐いて、

悪態ついて、出て行って。



何で怒らないのか?



いつもと様子が違う母さんたちの行動に、

理解ができなかった。



3人で食卓を囲むように座り、

僕は黙ってご飯を食べ始めた。



隣に座っている父さんは、

コンビニで買ったおにぎりに苦戦している。



ただ単に順番通り開けていけばいいだけなのに、

不器用な父さんは順番通りに開けても、

上手くいくことなんてない。



いつもは母さんに開けてもらうくせに、

今日は強がって一人で頑張っている。



でも最終的には、おにぎりに巻く海苔がぐちゃぐちゃになって、白米がこんにちわしていた。
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